Kecofinの投資情報

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タグ:非農業部門雇用者数

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1月米国雇用統計 全くの想定外 - Kecofinの投資情報 - GogoJungle

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全くの想定外。

ISM統計などから、雇用がそそこ堅調なのはわかっていたが、今回は特殊事情により弱く出るはずだった。

それと、今回は、過去に遡って修正がなされている。かなり大幅な修正だ。
これだから、雇用統計の予想は難しい。

今回の結果を受けて、とりあえず、金利は上昇、為替はドル高。
株式市場は消化できていない。そんな想定はしていなかった。
経済成長が(企業収益拡大も)続いている、(物価高を除いて)経済に異変がないということはポジティブかもしれないが、金融引き締めが淡々となされることを示唆するもので、株式相場にとっては半年後を見渡せばネガティブだろう。







米国雇用現場は混乱している。5月の予想はパス。理由は、次の通り。
(1)新規失業保険請求件数と失業保険継続受給者数の関係が混乱している。
(2)4月について、米労働省労働統計局(BLS)とADP雇用統計の整合性が取れていない。
(3)5月のISM製造業景気指数の雇用指数は、前月の55.1から50.9に低下し、昨年11月以来の水準にとどまった。政府の失業保険延長給付の影響。
5月の米製造業景況感0.5ポイント上昇 供給制約続く: 日本経済新聞

米国雇用統計4月データについて、
<参考> ■米4月雇用統計:男女間、人種別、学歴別で明暗分かれる | My Big Apple NY

(1)私は、雇用統計の予想は、基本的に新規失業保険請求件数をベースに予想してきた。
(A)企業が人の採用が活発だと退職者が少なくなる⇒雇用保険申請者数が少なくなる。また、退職者が増えると申請者数が増える、ということで、両者の相関を見ていた。
(B)補完的に、新規請求者数が拡大すれば、それに遅れて(請求が認められて給付が始まるので)雇用保険受給者数が増加するので、時間差をもって両者の相関もチェック。
また、受給者が雇用されると、雇用が決まってから、時間差を置いて受給が止まるので、時間差をもって両者の相関もチェック。

ところが、新規請求者数と受給者数の相関がこれまでにない様相になっている。理由はわかっている。政府の失業保険延長給付の影響だ。
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(2)4月について、米労働省労働統計局(BLS)とADP雇用統計の整合性が取れていない。
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(3)5月のISM製造業景気指数の雇用指数は、前月の55.1から50.9に低下し、昨年11月以来の水準にとどまった。政府の失業保険延長給付の影響で、景気動向とズレがある。
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以上の通りだが、念のため、
新規失業保険請求件数から前月比雇用増加数を推測すると、+1,100千人になる。
受給者数から、その推移の傾向が続くとして、前月比雇用増加数を推測すると、+200千人になる。
全く異なる。全く根拠はないが両者を足して2で割ると、650千人となる。これは市場の予測に近い。
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20210602e



過去の予想と結果
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新規失業保険請求件数から推計した4月の非農業部門雇用者前月比増加数は+804千人。

予想のベースとなるグラフは次の通り。
グラフでは、新規失業保険申請件数前月比増加数数(右目盛)と書いてあるが、
正確には、「米新規失業保険申請件数数4週移動平均の4.3週前比増減(小数点以下部分は案分)」。
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過去の予想と結果
20210506b


なお、FRBは雇用がCOVID-19パンデミック前の水準を回復してこないと利上げしないと言っている。(リーマンショックの時と同じ)
というわけで、当分利上げの可能性は殆どない。
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新規失業保険請求件数から推計した3月の非農業部門雇用者前月比増加数は+622千人。

新規失業保険申請件数(4週移動平均の1か月前比)と非農業部門雇用者数前月比増減の関係について、
前者は週次データ、後者は月次データ(但し、集計のタイミングは12日を含む週)だが、これまで使っていたグラフは微妙に両者のタイミングがずれてきたので、今回はファインチューニングした。
チューニング後のグラフは次の通り。
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上図から、3月の非農業部門雇用者前月比増加数は+622千人。

過去の予想と結果
20210331b
これを見ると、全く当たっていないのがよくわかる。以前はこんなに外れなかったのに?
covid-19パンデミック以降、おかしくなった。
ただ、傾向は外れていないので、今回のチューニングで改善することを祈る。

次も参考にしてください。
米 雇用統計と政策金利 : Kecofinの投資情報


3月の非農業部門雇用者数は60万人程度の増加を予想している。以前は、非農業部門雇用者数が前月比で20万人や30万人増加となると、すわ利上げかとなっていた。ましてや、50万人とかなると0.5%の利上げか、と思われたものだった。しかし、今は違う。
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通常、金融政策は政策金利に現れる。
政策金利の上昇は、株式PERの低下を招く。
なので、金融政策は注目される。
金融政策を決めるのは、物価と雇用だ。
計数的には、PCE価格指数(又は、消費者物価指数)と雇用統計(非農業部門雇用者数と失業率)を見る。

で、過去は非農業部門雇用者数が前年比175万人(月当たり15万人程度)増加すると、政策金利FFレートを前年同期より高くしていた。なので、非農業部門雇用者数が前月比で20万人や30万人増加となると、すわ利上げかとなっていた。ましてや、50万人とかなると0.5%の利上げか、と思われたものだった。
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しかし、今回は違う。FRBはCOVID-19パンデミック前の水準を回復してこないと利上げしないと言っている。これはリーマンショックの時と同じ措置だ。
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2月時点では、非農業部門雇用者数はCOVID-19パンデミック前の水準に比べ▲8,345千人(事業所調査ベースでは▲9,475千人)。これでは、毎月当たり平均して300千人雇用者数が増加すると仮定すると、非農業部門雇用者数がCOVID-19パンデミック前の水準に戻るには30カ月(2年半)程度かかる。つまり、利上げは23年秋~24年春ということになる。

4月2日に発表になる3月の雇用統計では、私は非農業部門雇用者数前月比増加数は600千人と予想しているが、この調子で雇用が増加しても、15か月程度はかかる。

というわけで、当分利上げの可能性は殆どない。
市場は、もう一つの金融緩和政策=量的緩和の縮小について考えている。
数量的には、Fedのバランスシート、M2伸び率だ。
<参考>
Credit Easing: Latest Data Federal Reserve Bank of Cleveland
Monetary Aggregates - Yardeni Research Page 4 Figure 7


量的緩和の縮小があれば、これもPERの低下につながるだろう。
というわけで、FedのバランスシートとM2伸び率を市場が注目している。
Fedのバランスシートの縮小はFOMCで決定されるので、FOMCに注意していればいい。
M2についてはデータを見ることになるが、実は、Fedは週次データの発表を1月データを最後にやめた(正確には、非季調値を月次データと同時に発表する。これでは速報性はない)。
2月のデータが、3月23日に発表された。



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