Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

タグ:雇用者報酬

日本のGDPは停滞している。
コロナ禍前(19年10-12月期)の水準も回復せず、増してや消費税増税前の水準ははるかに遠い。
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名目GDPの停滞が続いて困るのは、
(1)世界の中での日本のプレゼンスが落ちる(国連分担金の低下や、農産品等の買負け、防衛費を増やしにくいなどなど)
(2)雇用者報酬も伸びないことになり、生活が徐々に苦しくなっていく。商売も売り上げが伸びず、苦しくなっていく。こんな状態で原材料が上がれば、企業運営は非常に厳しくなる。

雇用者報酬は、一時的に伸ばす(伸びる)ときもあるが、結局、名目GDPの伸びに落ち着く。
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どうして、経済回復が鈍いのか
(1)消費税増税で消費が落ち込んだところに、コロナ禍に入り、雇用者報酬がそれほど落ち込んだわけでもないのに、消費マインドが冷え込んだままである。社会保険料がチマチマ上がっていっているのも消費者の将来不安を掻き立てる。財政赤字拡大を異常に国民に心配させ、将来の増税・社会保険料増(そういえば、失業保険料も上がる)、年金減の不安を煽っている。
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(2)原油価格などエネルギー価格が上昇しており、原油の輸入量は増えていないのに、輸入金額ばかり増えている。日本が輸出や海外で稼いだお金を原油の値上がりで持っていかれている。家計は、光熱費が増え(使用料は同じでも、使用料金は増える)、その分、他の消費が抑えられる。原油価格があがれば、ガソリン価格も上がり、輸送コストも上昇、ハウス栽培コストも上昇、などなどで物価は上昇。ますます消費が手控えられる。


どうすればいいのか?
日本は、国際収支上の所得収支が大幅プラスで、安定的な経常黒字国である。
消費が増えて、輸入が増えて、貿易赤字になって、経常赤字になって、その分、海外から借金しなければならないということはない。
であれば、消費マインドを上げて消費意欲を高めることである。
消費意欲を高めるには、安定的な所得を保証することである。(昔のように、経済成長が続いているときは、そんなことをしなくても、将来の賃金増は想像できた。)
一時的な賃上げは必ずしも消費に回らないばかりか、一時的な賃上げができない企業も多い。
結局、安定的な所得の保証は一つしか手がない。例えば、政府が四半期ごとに全国民に一律10万円を給付することである。財源は、国債発行、累進課税、金融所得課税、金融資産課税である。経済が拡大してくれば、税収が増えてくるので、国債増発などは不要になる。
たぶん、この分配政策しかないような気がする。

あるいは、インフレによる物価上昇と賃上げのスパイラルである。名目GDPは拡大する。ただ、これは今の日本にとっては厳しいかもしれない。


















今さら、アベノミクスの計画は意味がないが、参考までに載せておく。
前期比増加率も大事だが、以前の水準に戻るにはまだまだ。
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失われた30年に向けて走っているように思う
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名目前年比で見ると、
帰属家賃を除く家計消費は▲9.0%、住宅投資は▲13.2%、企業設備投資は▲11.0%とかなり悲惨な状態だ。特別定額給付があったにもかかわらず消費が弱い。
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デフレーターで測る物価は、マイナスになっていない。
GDP(全体)デフレーターもGDP(うち、家計消費)デフレーターともに前年比プラス。
価格は保持しているようだ。
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日本経済の一つの問題は家計支出(住宅投資含む)が弱いことだ。老齢化が要因か、社会保険料等の増加が要因か、それとも、その他に要因があるのか?
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特に、雇用者報酬が増えているにもかかわらず、家計支出が弱い。全く、どうなっているのか?
研究がなされているはずだと思うので、時間があるときにでも調べたい。
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雇用者報酬の伸びは名目GDPの伸びに遅行する。
これからは、雇用者報酬は伸びないだろう。むしろ、減少する可能性が高い。
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