Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

タグ:雇用統計

U.S. gains disappointing 266,000 jobs in April
理解できない
とりあえず、グラフだけ。

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雇用の拡大が停滞した理由は以下の通りだろうが、理解できないのは、新規失業保険申請件数やADP雇用統計との整合性が取れないことだ。

[ロイター] - 米労働省が7日発表した4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比26万6000人増と、市場予想の97万8000人増を大幅に下回る伸びとなった。労働力不足が要因となった可能性がある。政府からの大規模な支援を背景に米経済が再開される中、企業は旺盛な需要への対応に追われている。
3月の雇用者数は77万人増で、当初の91万6000人増から下方修正された。新型コロナウイルス流行前の昨年2月に付けたピークからはなお820万人の雇用が失われている。
4月の失業率は6.1%と、3月の6.0%から上昇した。コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いがかく乱要因となっている。
全米クレジットユニオン協会のチーフエコノミスト、カート・ロング氏は、今回の統計について「失業手当の拡充が労働力の供給を制限している」と分析。
16歳以上の国民がコロナワクチン接種を受ける資格を得たことで、ニューヨーク州やニュージャージー州、コネティカット州などで店舗の収容人数制限の大半が解除される中、消費者の需要は高まる一方、労働力や原材料の不足といった問題も発生。製造業から飲食業に至るまで、雇用主は労働者の確保に奔走している。
人手不足の理由としては、手厚い失業手当に加え、親が育児のために在宅を強いられていることやコロナ禍をきっかけとした退職などさまざまな要因が挙げられる。失業手当の支給が終了する9月までは緩やかな雇用ペースが続くという見方もある。
雇用の内訳は、レジャー・接客が33万1000人増加し、そのうちレストランやバーが半分以上を占めた。一方、人材派遣は11万1000人減少。製造業も1万8000人減った。世界的な半導体の供給不足により、自動車メーカーが減産を余儀なくされた。運輸・倉庫では、宅配・メッセンジャーが7万7000人落ち込んだ。

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[ロイター] - 米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は、「総体的」指標として注目する人口に占める雇用者の比率は57.9%と、昨年12月の57.4%から小幅な伸びにとどまっており、新型コロナウイルス危機前の61.1%をなお下回っていると指摘。
米経済が年末までにトレンド成長に回復する公算が大きいとしつつも、新型コロナのパンデミック中に積み上がった家計の貯蓄が「余裕」となり、職場復帰の足かせとなっている可能性があるほか、新型コロナへの懸念や保育サービスの不足失業保険手当て上乗せなども影響していると指摘。

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米経済は目覚ましく進展、より良い再建へ一段の行動必要=財務長官 | ロイター
イエレン長官は、米経済の回復にはまだ長い道のりがあることが雇用統計から浮き彫りになったと指摘。しかし、サービス産業の状況改善など、明るい材料も確認されたと述べた。また、失業保険手当の上乗せが労働市場参入の阻害要因になっているとは考えていないとした。
さらに、米経済が2021、22年に堅調に拡大し、来年には最大雇用に達すると確信していると述べた。インフレについては、テクニカル要因によって今後数カ月上昇する見通しとした。

新規失業保険請求件数から推計した4月の非農業部門雇用者前月比増加数は+804千人。

予想のベースとなるグラフは次の通り。
グラフでは、新規失業保険申請件数前月比増加数数(右目盛)と書いてあるが、
正確には、「米新規失業保険申請件数数4週移動平均の4.3週前比増減(小数点以下部分は案分)」。
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過去の予想と結果
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なお、FRBは雇用がCOVID-19パンデミック前の水準を回復してこないと利上げしないと言っている。(リーマンショックの時と同じ)
というわけで、当分利上げの可能性は殆どない。
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市況解説では、
「4月1日に発表された米国の先週分新規失業保険申請件数は前週比6.1万件増の71.9万件と、予想67.5万件を上回った。新規失業保険申請件数が予想以上に増加したため米国債利回りは低下、ドル売りが起きた。」
それにしても、新規失業保険申請件数がこんなに注目されるなんて。以前は一部のプロだけが注目するデータだった。

米失業保険申請、72万人 2週ぶり増加: 日本経済新聞
米新規失業保険申請、予想外に増加-労働市場の回復なお不安定 - Bloomberg
失業保険申請件数の予想外の増加は労働市場の回復が不安定なものになることを浮き彫りにし、新型コロナ流行を要因に失われた数百万の雇用を取り戻すには時間がかかることを示している。一方でワクチン接種が増加し、事業活動の制限措置は緩和されており、雇用の伸びが今後数カ月に加速するとみられている。
米新規失業保険申請71.9万件に悪化、改善傾向変わらず | Reuters

参考 
新規失業保険請求件数のグラフ
News Release

今回の発表では、2016年以降の季節調整が変更されデータが改定された。
それに伴い、新規失業保険請求件数を要因とする雇用統計モデルも修正される。
注 モデル自体は変わっていない。要因(従属変数)のデータが変わっただけ。
これにより、3月の非農業部門雇用者数前月比増加数の予想を622千人から722千人に修正する。
(下二けたが同じ数字になったのは偶然)

変更後
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変更前
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新規失業保険請求件数から推計した3月の非農業部門雇用者前月比増加数は+622千人。

新規失業保険申請件数(4週移動平均の1か月前比)と非農業部門雇用者数前月比増減の関係について、
前者は週次データ、後者は月次データ(但し、集計のタイミングは12日を含む週)だが、これまで使っていたグラフは微妙に両者のタイミングがずれてきたので、今回はファインチューニングした。
チューニング後のグラフは次の通り。
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上図から、3月の非農業部門雇用者前月比増加数は+622千人。

過去の予想と結果
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これを見ると、全く当たっていないのがよくわかる。以前はこんなに外れなかったのに?
covid-19パンデミック以降、おかしくなった。
ただ、傾向は外れていないので、今回のチューニングで改善することを祈る。

次も参考にしてください。
米 雇用統計と政策金利 : Kecofinの投資情報


3月の非農業部門雇用者数は60万人程度の増加を予想している。以前は、非農業部門雇用者数が前月比で20万人や30万人増加となると、すわ利上げかとなっていた。ましてや、50万人とかなると0.5%の利上げか、と思われたものだった。しかし、今は違う。
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通常、金融政策は政策金利に現れる。
政策金利の上昇は、株式PERの低下を招く。
なので、金融政策は注目される。
金融政策を決めるのは、物価と雇用だ。
計数的には、PCE価格指数(又は、消費者物価指数)と雇用統計(非農業部門雇用者数と失業率)を見る。

で、過去は非農業部門雇用者数が前年比175万人(月当たり15万人程度)増加すると、政策金利FFレートを前年同期より高くしていた。なので、非農業部門雇用者数が前月比で20万人や30万人増加となると、すわ利上げかとなっていた。ましてや、50万人とかなると0.5%の利上げか、と思われたものだった。
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しかし、今回は違う。FRBはCOVID-19パンデミック前の水準を回復してこないと利上げしないと言っている。これはリーマンショックの時と同じ措置だ。
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2月時点では、非農業部門雇用者数はCOVID-19パンデミック前の水準に比べ▲8,345千人(事業所調査ベースでは▲9,475千人)。これでは、毎月当たり平均して300千人雇用者数が増加すると仮定すると、非農業部門雇用者数がCOVID-19パンデミック前の水準に戻るには30カ月(2年半)程度かかる。つまり、利上げは23年秋~24年春ということになる。

4月2日に発表になる3月の雇用統計では、私は非農業部門雇用者数前月比増加数は600千人と予想しているが、この調子で雇用が増加しても、15か月程度はかかる。

というわけで、当分利上げの可能性は殆どない。
市場は、もう一つの金融緩和政策=量的緩和の縮小について考えている。
数量的には、Fedのバランスシート、M2伸び率だ。
<参考>
Credit Easing: Latest Data Federal Reserve Bank of Cleveland
Monetary Aggregates - Yardeni Research Page 4 Figure 7


量的緩和の縮小があれば、これもPERの低下につながるだろう。
というわけで、FedのバランスシートとM2伸び率を市場が注目している。
Fedのバランスシートの縮小はFOMCで決定されるので、FOMCに注意していればいい。
M2についてはデータを見ることになるが、実は、Fedは週次データの発表を1月データを最後にやめた(正確には、非季調値を月次データと同時に発表する。これでは速報性はない)。
2月のデータが、3月23日に発表された。



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