Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

タグ:金価格

金価格とその理論値(妥当値)の乖離で、投資家の金融市場に対する心理がわかる。それによれば、今は通常状態(WNL=within normal limits)だ。
FRBが示唆している以上に金融緩和の縮小があるとも思っていないし、金融緩和の継続があるとも思っていない。つまり、過度にインフレを恐れていない(一時的なインフレはあっても、持続的ではない)し、さりとて、それをまるっきり信じていることもない。
まぁ、今の金価格を見ても、投資家心理がわかるだけで、将来の予測に役立つわけではない。

20210514a
昨年7月には、投資家は多少パニくっていた。
逆に、今年1~3月は、投資家はFRBの金融政策に全幅の信頼を置いていた(珍しい)。
4月以降は、それが普通の状態に戻った。
それだけのことで、市況予測に役立つかと言われると、そんなことはなさそうだ。







期待インフレ率の上昇が続いている。10年期待インフレ率(今後10年間の平均インフレ率の予想)はほぼ2%。これが2.3~2.5%とかになったら、金融緩和姿勢に変更懸念が出て株価調整の可能性が高いと思う。
20210104m

①ドル安(ドルの実効為替レート=ドル指数(DXY)の低下)が続いている。
②期待インフレ率の上昇→実質金利(=名目金利-期待インフレ率)の低下がおきている。
よって金価格が上昇している。
まだ理論値より低いので、パニック的な買いにはなっておらず、つまり、金融不安にはなっていないので、株価が不安定になる状態にはなっていないが、徐々にその懸念が高まっている。
20210104n

今年の相場予想のニュースをいくつか見たが、インフレ懸念に言及したものはない。
私も、インフレの心配はないと思うが、これだけ期待インフレ率が上昇(ドル安、原油高などで)してきているのだから、全く言及しないというのもどうなのかなぁ?

まぁ、私の予想は外れるのが通常で、懸念は懸念で終わるのも通常なので、心配するだけ無駄かもしれないが・・・・

足許で、理論値は、実質金利が低下・ドル安でやや上昇。
一時金価格も反騰したが、理論値には追い付いていない。市場がリスク資産の価格下落懸念を持っていない状況が続いている。
20201210i

参考のため、金価格の普遍的なモデルはなさそうだ。
つまり、金価格の理論値(推計値)は一つの式で永遠に表すことは無理っぽい。
最近では2017年に推計式の係数が変わった。
その前は、2012年にユーロソブリンリスクの収束とともに、推計式が変わった。
20201210h

金価格が反騰している。
但し、"金"が再び輝きだしたわけではない。(将来はわからないが、今のところは)

前回のレポートで言葉足らずだったが、正確に書くと、金が輝くときは金の価格にプレミアムがついている時である。
プレミアムとは理論価格(推計値)をそれなりに上回っているということである。

そういう意味で、事態が特に変化したわけではない。

20201202j

先週金曜日、実質金利は低下し、ドルは下落した。本来なら金価格は上昇するはずだが、あにはからんや大きく下落した。何が起きたのか?
20201129b

お先が暗い時(不安のある時)”金”は輝く(金価格は強含む)。
お先が明るくなった時(不安がなくなったとき*)金は輝きを無くす(金価格は弱含む)。
 *インフレ懸念がなく、金融システム不安もなく、倒産ラッシュなど経済不安もない。

金は輝きを無くしたようだ。つまり、お先が明るくなったということだ。
VIX指数も低下している。
世界最大の金ETFであるSPDRゴールド・シェア・ファンドの金保有残高も減少している。投資家が保有を減らし始めている。
20201129a

金が輝かなくなった時、リスク資産は線香花火のちり菊のようになる。菊の花びらが咲いては散り咲いては散って、線香花火が最も美しい時だ。そして、物語の終焉だ。しかし、ここからが長くいつまでも余韻を残して漂う。  (参照 米国株価上昇の背景 いつ、相場から降りるべきか

しかし、コロナが蔓延し、世界の多くの国でロックダウンや厳しい規制措置の導入に動いているのに、どうしてこんなに楽観的になれるのか? ワクチン開発のニュースが安心感をもたらしているのか。

一つはっきりしていることは、それでも世界経済は中国にけん引されて拡大しているということだ。銅価格は強く、原油価格も堅調だ。中国はパンデミックともおさらばしたようだし・・・。今や世界は中国中心に回っている。
20201129C




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