Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

タグ:外貨準備

それは金(カネ=ドル)である。
日本は世界最大の対外純資産国である。
しかし、外貨準備は中国がNo1である。
20210317p

両者の違いは何か?
対外純資産は、民間と政府の対外純資産(対外資産から対内資産を引いたもの)である。
外貨準備は、政府の保有する対外資産である。

日本は、民間が貿易等で稼いだ資金を、主に民間が対外投資する。つまり、民間が保有する海外資産が大きいということである。
中国は、民間が貿易等で稼いだ資金を元と引き換えに政府が吸収する。従って、政府が保有する海外資産(外貨準備)が大きい。

中国政府はこの世界No1の外貨準備を、対外戦略に使っているのである。
しかも、恐ろしいことに、対外純資産も香港を加えると、日本を越えて世界No1になる。

米国は唯一のワールド・マネーをプリントできる国である。その資金で輸入を行い、相手国に恩恵を与えている。おかげで、貿易赤字は大きく、対外純資産はとんでもないマイナスである。
中国は、保有するドルを貸したり、海外でインフラ事業を行い、相手国を牛耳っている。

米国はワールド・マネーを自らプリントできるが、中国は主に米国との貿易でドルを得た(中国への直接投資もある)。つまり、米国は中国に貿易でドルを与え、中国はそのドルで新興国などを牛耳っているのである。また、中国は人口が多いので対米で稼いだ資金で戦略的にドイツや資源国から輸入を行い、相手国への影響力を高めている。

米国政府がいくら中国にファイとしても、米国民間が中国に直接投資を行い、中国から輸入をすれば、今の図式は変わらない。米国が中国に圧力を加えたければ、米国企業を制御する必要があるが、米国ではそれは簡単ではない(中国が中国企業を制御するのは簡単)。
日本でも、楽天は中国テンセントと提携して、日本製商品を微信(ウィーチャット)を通じて販売したいようだ。また、テンセントの楽天株の保有割合は3.65%となる。民間にとって中国は魅力的だ。それも、中国がドルを持っているからだ。

もはや、中国の世界覇権については、抜き差しならない状態になりつつあるようだ。

20210317q




中国、米国債は「ダイエット」、日本国債は「暴食」

中国は対外証券投資内訳を発表していないので、相手国(中国の投資先国)のデータで検証することになる。
今回は、米国のTIC(財務省国際資本)統計、日本の対内証券投資データで検証した。

TICの残高データでは、中国は5カ月連続で米国債保有残高を減らし、4年7カ月ぶりの低い数値となった。
他方で、日本国債の保有を増やしている。

中国の2020年9月末の外貨準備は3142.5十億ドル。中国の米国証券(国債、政府機関債、社債、株式)保有額は推計1560十億ドル、これには民間の保有も入っている。
外貨準備のドル保有は半分もないようだ。

私の推測の結論は、
中国政府(つまり、外貨準備)は米ドル資産の保有を減らし、日本国債の保有を増やしている。
一方で、民間(生保や企業、投信など)は米国証券の保有を増やしているようだ。
こうした動きは極めて徐々に進んでいる。大きな変化は見られない。
中国は経常黒字の国で、資金余剰が発生しているはずであるが、それは多分に直接投資に回っている。
米欧の企業買収や、新興国への投資に回っているということだろう。その目的は武田薬品がシャイアーを買収したようなM&Aグロース目的ではないだろう。国家戦略に沿っていると思われる。

(1)中国の米国債保有と外貨準備
20201122a
(2)中国と日本の米国債保有
中国の米国債保有は大部分が外貨準備による保有だと思われるが、日本の米国債保有は、民間(公的年金や生保など)の保有がかなりある。
20201122b

(3)残高データでは中国は9月に米国債の保有を減らしているが、フローデータでは中国は米国債をかなり買っている。データの算出方法( methodology)に違いがあるからのようだが、よくわからない。研究心旺盛なら、TICのFAQで研究してみてください。但し、FAQには、他を参照しろとか書いてあるので、相当骨が折れると思う。私はgive upした。
20201122c
(4)中国の日本債券購入額
特に短期債の購入額が増加している。
20201122e
(5)中国の対外資産負債残高
20201122f
(6)中国の米国証券保有
20201122g



参考
Frequently Asked Questions Regarding the TIC System and TIC Data
Coordinated Portfolio Investment Survey - CPIS Home - IMF Data


↑このページのトップヘ