米国株相場の注目点は、金融政策だ。
つまり、インフレが起きるかどうかだ。
複雑なのは、FRBは一時的な物価の上昇は容認する、むしろ、ある程度の期間物価上昇率が目標値(2%)を超えるのを歓迎すると言っていることだ。
長期的に2%トレンドの上昇が目標なので、今のようにそれを下回る状態があれば、それを取り戻すためにある程度の期間(3年余りかかる可能性)2%を上回ることが必要だと言っている。
これでは、どうなれば金融政策が変わるかどうか判断がつかない
さらに厄介なのは、金融緩和を持続すると資産インフレ(不動産や株価)リスクがでてくるが、資産インフレをどう考えているのかわからない。

いずれにしろ、財政拡張・金融緩和・経済成長が続き、株価の上昇トレンドは崩れていないが、市場は立ち止まって考える時期にあるようだ。

パウエル議長は目先物価上昇が起きるが一時的と言っている。目先の上昇の理由は、
(1)前年との比較による「ベース効果」による物価上昇
(2)経済活動再開に伴う需要急増
(3)原材料価格の上昇や生産の遅れ(サプライチェーン面での制約などで)による供給不足による物価上昇
を挙げているが、「この状況は必ずしもインフレにつながらない。インフレというのは(一時的な物価高騰ではなく)、毎年のように繰り返され継続的に物価が上昇するプロセスだからだ」と述べた。
また、このインフレに対して、当局には「それに対応する手段がある」と述べた。

私の考えだが、
■『繰り返され継続的に物価が上昇する』とは、
物価上昇・企業の売上増⇒賃上げ⇒消費金額増(需要増)⇒物価上昇・企業の売上増・・・・
というスパイラルな現象を言う。
しかし、今の雇用状況は賃上げが続くような状態にはない。
■一時的なインフレに対して、当局には「それに対応する手段がある」というのは、
自然に起きる長期金利上昇を容認し、過度なインフレにならないように物価安定装置を働かせること。

なんだか、FRBの思うとおりに経済が進むように思えるが、ISMやmarkit PMIの価格指数を見ると、本当にそのようにいくのかと思ってしまう。私だけでない、市場も立ち止まって考えているのではないか?

以下、ベース効果について

次のグラフに見るように、
コアPCE価格指数前月比上昇率は概ね0.13%(年率1.57%)である。
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仮に、今後、コアPCE価格指数前月比上昇率が0.13%で続いたとすると、コアPCE価格指数前年同月比上昇率は赤線のようになる。4月には2.31%になるが、その後低下していく。つまり、一時的に2.3%を越えるということだ。PMIの価格指数などを見ると、もう少し高くなるかもしれない。これを一時的と達観していられるか?FRBはそうでも市場はどうか?マスコミは2007年12月(2.33%)以来13年4カ月ぶりの物価上昇というだろう。
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