Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

タグ:インフレ

予想以上に物価が上昇しても、強い経済データが発表になっても、金利が上昇しなかったので、金利上昇に賭けていた投資家が、巻き戻しを余儀なくされ、金利低下が起きたということだろう。

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米国市場の大きな変化=それは、インフレ懸念が後退したことである。
徐々に、そういう気運は高まっていたが、4月13日の予想以上CPIの発表にも拘わらず、10年金利が低下したことで明白になった。
そして、15日、フィラデルフィア連銀製造業指数は1973年以来の高水準、NY連銀製造業指数は2017年以来の高水準、小売売上高は9.8%の大幅増、新規失業保険申請件数は大幅減、それなのに10年金利は大幅急低下した。それを受けて、ドル安、金価格上昇が起きた。摩訶不思議とはこのことだ。

そもそも、市場は、これまでの積極的な景気刺激策を背景に経済が回復基調を強めているなかで、新型コロナ・ワクチンの普及してきていること、さらに大型経済対策が打たれることで、ペントアップ・ディマンドもでて、ディマンドプル・インフレを懸念していた。

市場が懸念していたのは、グラフの赤線のような事態だった。
20210416a
20210416b

しかし、状況は変わった。
赤線の懸念は後退し、過去平均並みの状態に戻ると市場はchange mindしたようだ。
FRBは、一貫して「一時的な物価上昇はあっても、賃金のスパイラル的な上昇がなければ、持続的インフレは起きない。そして、雇用水準が今のように低ければ、スパイラル的賃金上昇は起きない。」と言ってきた。市場もそういう見方になったのだろう。
また、追加経済対策の一方で、増税という軽いブレーキも踏まれそうなことも景気過熱・インフレ懸念抑制につながったであろう。

それはそれでいいのだが、問題はchange mindしたタイミングだ。冒頭のようなタイミングで、インフレ懸念が抑制されたのは殆ど説明がつかない。

一部の米国投資家などは、インフレ懸念低下⇒金利低下ではなく、
米国長短金利差拡大&短期金利の長期低位安定⇒日本から為替ヘッジコスト低下を背景とした米長期債購入が増える⇒米長期金利低下 と解説している。
海外投資家による米国債保有が大きく、その中でも日本による米国債保有が世界一ということに敬意を払ってくれたのだろう。
参照 誰が米国国債を買っているか
こういう解説をしなくてはならないほど、説明に窮しているということだ。
かりにそうだとしても、タイミングの説明がつかない。

結局、予想以上に物価が上昇しても、強い経済データが発表になっても、金利が上昇しなかったので、金利上昇に賭けていた投資家が、巻き戻しを余儀なくされたということだろう。

今回はここまでにするが、今後のブログの予定として。
(1)経済が拡大すると、まずは単位労働コストが低下(生産量は増えるが、賃金上昇は遅れる)し、生産コストが低下するために物価は下がることが多い。
(2)インフレは起きなくても、足元で住宅価格の上昇に弾みがついている。住宅ローン金利につながる長期金利があまり低下して住宅購入ニーズが刺激されることはFRBとしては歓迎しないだろう。

注目の消費者物価上昇率が発表された。
(本当の注目は4月のコア個人消費支出価格前年同期比上昇率だが)
2月の食料とエネルギーを除いたコア消費者物価(CPI)前月比上昇率は0.10%と過去の平均的な水準よりもかなり低い、前年同月比も1.28%と全く低い。
20210311a
20210311b
これと、1.9兆ドルの追加経済対策法案を下院が可決し早期成立の目処が立ったことからNYダウは大きく上げた。
但し、インフレ懸念が払しょくされたわけではないこと、投資家の銘柄入れ替え(成長株から割安株へ)が行われていることからNasdaqは下げた。
(注)年金などは、一たび方針を決めたら、簡単には方針を変更しない。


今回の2月の消費者物価上昇率だが、エネルギーを除くと、かなりの項目で伸びが低い。
Consumer Price Index for February 2021

企業の仕入れコストの上昇、需要の増加から考えて、奇妙だ。
イエレン財務長官は、一時的にもインフレは起きない(コアで2%超?)ようなことを言っている。
引き続き要注意。
20210311c

参考
米国 インフレ懸念高まる
米国 物価について 現況(3)

昨日(2021年3月3日)、金価格がストーンと落ちた。
ISMサービス業指数が予想より弱かったのに? 1月=58.7 2月=55.3
 ■2月の米非製造業景況感3.4ポイント低下 9カ月ぶり低水準: 日本経済新聞
普通なら、ISMサービス業指数低下⇒金利低下⇒金価格上昇 のはずだ。
市場は、総合指数など見ていなかった。
サブ指数の価格指数が1月=64.2 2月=71.8 と跳ね上がったのだ。
これで、⇒金利上昇⇒金価格下落 の図式となった。
(そのわりに、金利の動きは鈍かった。既に1回揉まれているからだろう。)
20210304m

マーキットサービス業PMIの価格指数も上昇したようだ。

因みに、ISM製造業価格指数はISMサービス業価格指数より強い。
20210304n

FRBが何を言おうと、市場はしばらくインフレ懸念から抜け出せそうにない。
(前々回のブログ参照)
業績は伸びても、高PER株は調整しやすい状況だ。


FRBの金融政策 
<目標>
労働市場が、FOMCが完全雇用と評価する水準に到達し、インフレ率が2%に上昇し、2%を緩やかに上回る状態が当分続くこと。 
長期的に2%の物価上昇率が目標なので、今のような2%を下回る期間が続けば、その後は2%を超える期間が続くことが必要になる。

物価上昇率2%を目標に、デフレに陥らないことを確保
昨年1月29日のFOMC声明文で、物価について、「インフレ率の推移を支える」から、「対称的な物価目標である2%近くでインフレ率が回帰することを支える」に変えた。
数人の委員から「インフレ率の推移を支える」では2%以下のインフレ率で満足しているような誤解を受けるかもしれないとの指摘があったからで、FOMCは「2%の物価目標を下回ってインフレ率が推移し続けることに満足していない」というメッセージを明確に発信するための修正だとした。
FRBは、物価が2%を回復し、再び下落しないことを望んでいることを忘れてはいけない。

<政策>
FRBは新型コロナウイルスだけでなく、その余波で長期間続く可能性の高い景気悪化に対しても、長期的な戦いに取り組んでいる。

第1段階 利下げ 実質ゼロ金利に
第2段階 量的緩和 金融資産(国債、住宅ローン担保証券)を買い入れ
第3段階 フォーワード・ガイダンス 昨年9月16日のFOMCで、2023年まで実質ゼロ金利を示唆
第4段階 そして、市場は、第4段階として YCC(FRBはイールドカーブのフラット化)を期待していた。FRBも「保有資産の構成や残存期間、規模、購入サイクルをシフトすることもできる」としていた。
またパウエル議長は、「追加の財政支援が、適切な時期に議会が適切と考える規模で行われれば、より力強い経済回復につながるだろう」「多くの議員が追加的財政支援の必要性を認識していると思う」とも述べていた。

こうした中で、パウエル議長は、今次上院・下院委員会での議会証言で、長期債利回り上昇について、
「底堅い景気回復に市場が自信を持っている証しだ」と当面は静観する考えを示した。
また、セントルイス地区連銀のブラード総裁は、最近の米10年債利回り上昇は成長見通しを反映する「妥当な」もので、良好な兆候(インフレ期待の高まりを目指すFRBにとっては「歓迎すべき動向」)と述べた」

そもそも、今や国債の最大の買い手はFedだ。誰が米国国債を買っているか
その気になれば、Fedは長期金利上昇を止めることはできる。その気がないどころか、長期金利上昇を歓迎している。

もはや、市場が期待した第4段階はなくなったということだ。
これが今回の相場調整を起こした背景だ。
しかし、ボスティック米アトランタ連銀総裁の言うように、「FRBの責務は完全雇用。GDPではない」なら、今の金融政策は予定通り維持されよう。しかも、底堅い景気回復となれば、株式市場にとって悪いはずはない。
"stay tuned"

ディーズNEC委員長、雇用はインフレよりも差し迫ったリスク - Bloomberg
ディーズ米国家経済会議(NEC)委員長は22日、インフレは注目に値するリスクだが、現在のより大きなリスクは労働市場への長期的な打撃だとの認識を示した。バイデン大統領が掲げる1兆9000億ドル(約200兆円)規模の追加経済対策案に対する批判に対応した。
バイデン大統領の経済対策案で家計支出が増えるにつれてインフレが加速する可能性がある。
しかし、「経済対策が行き過ぎるリスクより、それを防ごうと注力すると労働市場にさらなる傷跡を残すリスクの方が大きいと考えている」。

イエレン、パウエル両氏はフロスを警戒-景気刺激策を推進も - Bloomberg
超緩和的な経済政策が金融市場の行き過ぎを促進する可能性があるが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で経済は打撃を受け、大規模な支援が必要だとも考えられる。
私は、米国は株価バブル、日本は株価フロスと思う。

銅相場9000ドル、ニッケル2万ドル突破-回復期待で供給不足に警戒感 - Bloomberg
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)からの回復に伴う需要拡大が供給不足に拍車を掛けるとの観測が広がった。
経済の先行指標とされる銅の価格は、このままいけば過去最長の11カ月連続上昇となる。
ニッケルは一時2.2%高の2万10ドルと14年以来の高値を記録。
スズも一時11年以来の高値に達した。
ゴールドマン・サックスは、市場が今年過去10年で最も深刻な供給不足に直面すると予想し、今後数カ月の不足のリスクは高いと指摘した。

イエレン米財務長官、法人税の増税にバイデン政権は「前向き」 - Bloomberg
イエレン米財務長官は
バイデン政権は法人税率を28%に引き上げることを目指す。
キャピタルゲイン増税は「検討の価値がある」かもしれない
金融取引税は「一般の投資家に与え得る影響を綿密に調べる必要があるだろう」
富裕税は難しい。
と述べた。

選挙前は、非常に気にしていたが、法人税増税のことはすっかり忘れていた。
実現すれば、高収益、高PERの株価への打撃は大きくなるだろう。
22日の米国株式市場のハイテク株の下げの背景にはこれもあるんじゃないかと思った。
20210222close
米国株価map finviz.com


  

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