FOMCに関して、以前は、日経新聞(含む電子版)の記事では用が足りなかったが、今は本当に充実した。情報としては日経だけで十分だと思う。後は、分析の問題だ。
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今回のFOMCのポイントは、インフレは一時的と頑なに言い張っていたトーンが弱まったことだ。
米連邦準備理事会(FRB)は6月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、
ゼロ金利政策(フェデラルファンド金利の誘導目標を0~0.25%)の維持と米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドルのペースで購入することを決めた。
FRBのメンバーの利上げ時期の想定は、米経済の回復と物価上昇率の加速を受けて、これまで24年以降だったが23年となった。
FRBは大規模緩和の出口に向けてまず量的緩和を縮小し、その後に利上げへ動く道筋を描く。向こう2年程度の長期にわたりゼロ金利を続ける政策運営の基本は変わらない。
足元の物価上昇の加速は「一時的」との見方は変えず、雇用の回復を確実にするため金融緩和を粘り強く続ける姿勢を改めて強調した。
インフレの加速に関し、経済再開で需要が急回復しているなど「一時的な要因」としつつ「供給制約の効果が想定していたよりも大きい」と警戒感を表明した。雇用については労働参加率の回復に時間がかかる可能性を懸念材料に挙げた。
物価上昇率は21年10~12月期に前年同期比3.4%に達し、目標の2%を大きく上回るとみている。ただ22年以降は2%強に落ち着くとみている。雇用の見通しは3月から大きく変わらず、失業率が21年末までに4%台に低下するとした。
財政出動とワクチン普及で経済活動の再開が進み、米景気は回復している。FOMCは景気見通しを3月から0.5ポイント上方修正し、21年10~12月の実質国内総生産(GDP)が前年同期比7.0%増えると予測した。22年は3.3%の予想。
以上のほか、FRBは、金融機関がFRBに預ける預金に付ける金利(IOER=Interest Rate on Excess Reserves)を0.10%から0.15%に引き上げることを決めた。
■Interest Rate on Excess Reserves (IOER) | FRED | St. Louis Fed
■FRB、準備預金の利息上げ 短期資金の余剰に対応: 日本経済新聞
短期金融市場で資金余剰が強まり、金利低下圧力がかかっており、準備預金金利を引き上げることで過度な金利低下を防ぐ狙いがある。
誘導目標(0.00~0.25%)の範囲内であれば、本来は金融調節上の問題はないが、最近は短期金融市場での資金余剰感が強まっている。昨年以降の大量の資産購入で市中の資金量は膨張した一方、銀行は金融規制への対応で余剰資金をなるべく抑えようとしている。このため短期資金の押しつけ合いに近い状態となっている。
FRBが市中から資金吸収するリバースレポという金融調節は連日で5000億ドル(55兆円)以上と過去最大規模の利用が続いていた。
■Overnight Reverse Repurchase Agreements: Treasury Securities Sold by the Federal Reserve in the Temporary Open Market Operations (RRPONTSYD) | FRED | St. Louis Fed
FRBはこの金利も従来の0%から0.05%へ引き上げる。FRBは大量の国債購入で資金を供給する一方、短期金利を調整するために短期資金を吸収するといういびつな事態となっている。
債券を担保に短期資金をやりとりするレポ市場では金利が0%ちょうどや一部はマイナス金利にもなっている。投資家の運用資金の受け皿となるMMF(マネー・マーケット・ファンド)は金利のついた運用先が乏しくなっている。
■「経済活動と雇用、強さ増す」 FOMC声明要旨: 日本経済新聞
FOMCは、雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。
<私のコメント>パウエル議長は、以前にもそのように言っていた。この論で行くと、物価指数としてFRBが見ている個人消費支出価格指数の上昇が相当大きいことが当分続いても、物価上昇は容認できることになる。
ただし、物価として消費者物価を見ると、既に長期2%を越えている。
■FRB議長「強力な支援続ける」 記者会見要旨: 日本経済新聞
この中から、
・最近のインフレ率は予想を上回った
・木材、中古車など、最近のインフレ加速の要因は一時的である可能性が高い
・インフレは急上昇しているが、その後緩やかになる
・インフレが予想以上に高くなり持続する可能性もある
・インフレの経路や長期的なインフレ期待が持続して変化すれば金融政策を調整する準備がある
・2023年の政策金利見通しは決定や計画ではない(経済情勢次第で変更する)
・利上げがいつあっても政策は非常に緩和的だ
・超過準備への付利金利の引き上げなど技術的調整を実施。これは金融政策のスタンスに影響するものではない
・労働参加率の上昇には時間がかかるかもしれないが高水準に戻るだろう
・失業保険の減額は雇用創出の増加につながる
・現在は異例の事態。今後数カ月で見通しに影響を与えることも起こりうる
・(テーパリングについて問われ)もっとデータをみれば話せる
・経済情勢が目標に向かって前進すれば、テーパリングの計画発表を検討するのが適切だ
<私のコメント>イエレン長官は次のように言っている。『このところの米国の物価上昇については、バイデン政権はインフレを「極めて緊密に」注視しているとし、この問題を真剣に受け止めていると表明。物価上昇は米経済の再開がいかに難しいかを示しているとし、物価高につながっている供給網の阻害に政権は対応している。』 イエレン長官も『インフレが予想以上に高くなり持続する』リスクを認識している。FRBが言う『最近のインフレ加速は一時的だ』ということを盲目的に信用する必要はないだろう。
つまり、長期金利には上昇圧力がかかり、株価には下落圧力がかかり、ドルは上昇傾向になるだろう。後は、どのレベルまでかということだ。
なお、テーパリングについて、『もっとデータをみれば話せる』と言っている。議論の開始が近づいているということだ。
■FRB議長「物価上昇、予想より大きく」 会見要旨: 日本経済新聞
個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は4月に3.6%に達し、落ち着くまでには今後数か月かかりそうだ。要因にはエネルギー価格の上昇のほか、経済再開で消費が持ち直し物価上昇圧力がかかっていることもある。短期的な供給制約も生じており、その影響は予想されていたものより大きかった。
一時的な供給制約が和らげば、物価上昇率は我々の長期的な目標に向けて下がっていくだろう。
経済再開の過程では、需要動向の変化は大きく急速なものになり得るし、労働者確保の難しさなど供給制約は継続して供給量を左右しうる。よって物価上昇率は我々が予測を上回る値が長く続きうる。
もし物価上昇の道筋や、長期的な期待物価上昇率が実際に、長期にわたって我々の目標を超えるような兆候があれば、金融政策の構えを調整する用意がある。
記者会見での一問一答から
――失業者の労働市場への戻りが鈍いようだが、23年までの労働市場の見通しは。
「今後1~2年以内に失業率が低下し、労働参加率が上昇し、賃金が上昇すると自信を持って言える。ただ大量の雇用者が退職することで労働市場に人が戻るペースが鈍いことは確かだ。要因として、求職者のスキルと求人内容のミスマッチ、感染への懸念などが挙げられる。ワクチン接種の普及とともにこうした問題は解決し、失業給付も9月末にかけて終了することで労働者は戻ってくる」
「ただ、現在直面している労働市場は前代未聞だ。我々のデータを理解する能力を謙虚に捉えるべきだと思う。今は労働市場や物価上昇率、それを踏まえた金融政策についてきっちりとした予測を出す時ではない。数カ月たてば、我々の考えを伝えられるときがくるだろう」
「経済が好調であれば、賃金上昇は当然だ。新たな職に就く人を中心に賃金上昇がみられる。生産性や物価上昇率を大幅に上回る賃金となれば企業は値上げを余儀なくされる悪循環に陥ってしまうが、今はこうした事態は起きていない」
――どの程度、高い物価上昇率が続けば懸念材料として捉えるのか。
「物価上昇をけん引しているのは経済再開に関連する項目で、木材や中古車価格などがそうだ。供給制約で価格が一時的に上昇したが、いずれは落ち着くだろう。FOMC参加者は、23年には物価上昇率が我々の(2%)目標に近づくと予測している。その上昇は、非常に強い経済成長により、経済全般で雇用などリソースが逼迫し、インフレ圧力が高まることによる」
「期待物価上昇率に関しては長期的に見るようにしている。短期の物価上昇はガソリン価格などに左右されやすく、将来の物価上昇の予測には適切ではない。欧州中央銀行(ECB)や日銀のように、低い期待インフレ率が長期間続き、抜け出すのが困難になる状況は懸念していた。従って期待物価上昇率が許容範囲内で長期的に上昇するのは良いことだ。予測に正確な手法があるわけではなく、広範囲の物価指標の動きをみるようにしている」
「モノに対する需要は非常に大きく減速していない。サービス業も再開しており、価格は底値から戻りつつある。焦点となるのは、現在の高い物価上昇率が今後緩和されるかだ。直近の消費者物価指数(CPI)で大きく上昇したホテルや航空券などの価格も、木材や中古車と同様、大幅に上昇し続けることはないだろう」
――資産買い取りの縮小(量的緩和の縮小)を始める時期について議論したか。どのように周知するのか。
「時期については、より多くのデータが出た時点で言えると思うが、今はその予定を言える状況ではない。ただ(経済情勢について)議論したとは言える。経済は目標からはまだ遠いものの明らかに進展し、今後も続くとみている。その場合、資産購入の縮小についての計画を公表するのが適切だろう。今後の会合で景気の状況を評価し、参加者が一段の進展を認識したら、前もってその計画を知らせる」
「重視するのは、秩序だった方法で、透明性を確保することだ。我々の考えを前もって明確に伝えることに大きな意味があり、量的緩和の縮小を発表する前に伝えるよう努める。現時点で決まったことはなく、もっとデータを見なければならない。前進してはいるが、まだ遠いだろう」
――22年の経済予測を達成すれば、経済状況が大きく進展したと言えるのか。中期の政策見通しでは23年に利上げを2回実施することになるが、景気の完全回復が予想よりも早く来るということか。
「大きな進展に到達したかの判断はFOMCがするものであって、私が具体的な数字を引用して示すのは適切ではない。利上げの見込みは参加者個人の予想であり、FOMCとしての予測や計画ではない。今回の会合では利上げをいつ実施すべきかという議論はなかった。利上げの議論は時期尚早だからだ」
「ドットチャートは将来の利上げの有無を予測するためのツールとしてはふさわしくない。見通しが示すのは、景気の目標をこれまでの予測より早く達成できるとみるメンバーが増えているということだ。また利上げは今のFOMCの議論の中心ではなく、資産買い取りの方が重要だ。利上げはまだ先の話だ」
――今後、(景気停滞とインフレが同時に進む)スタグフレーションのリスクはないか?
「今年より財政支援がずっと少ない経済となるが、それでも長期的な潜在成長率をはるかに上回る非常に強い成長になると見られている。物価上昇率が想定より高まる可能性はある。だが根底にある高齢化、低生産性、グローバリゼーションといった物価上昇を抑制しているものが大きく変わるとは考えにくい」
<私のコメント>パウエル議長はグリーンスパン議長と違って謎かけ的なことを言わず、はっきり言う。それは相場の行き過ぎを作りやすい。下手をすると、今回は過度な金利上昇、過度な株価下落をもたらすかもしれない。
要は、インフレ次第なのだが、今までは一次的と言い張り、市場も信じざるを得なくなっていたが、今回はそのトーンが低下した。今までFRBに抑えつけられてたインフレに対する見方に、過剰反動がでないか心配だ。
いずれにしろ、よほど自信がなければ、株ロング、債券ショート、ドルショート、金ロングの新たな長期ポジションは作りにくい。
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今回のFOMCのポイントは、インフレは一時的と頑なに言い張っていたトーンが弱まったことだ。
米連邦準備理事会(FRB)は6月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、
ゼロ金利政策(フェデラルファンド金利の誘導目標を0~0.25%)の維持と米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドルのペースで購入することを決めた。
FRBのメンバーの利上げ時期の想定は、米経済の回復と物価上昇率の加速を受けて、これまで24年以降だったが23年となった。
FRBは大規模緩和の出口に向けてまず量的緩和を縮小し、その後に利上げへ動く道筋を描く。向こう2年程度の長期にわたりゼロ金利を続ける政策運営の基本は変わらない。
足元の物価上昇の加速は「一時的」との見方は変えず、雇用の回復を確実にするため金融緩和を粘り強く続ける姿勢を改めて強調した。
インフレの加速に関し、経済再開で需要が急回復しているなど「一時的な要因」としつつ「供給制約の効果が想定していたよりも大きい」と警戒感を表明した。雇用については労働参加率の回復に時間がかかる可能性を懸念材料に挙げた。
物価上昇率は21年10~12月期に前年同期比3.4%に達し、目標の2%を大きく上回るとみている。ただ22年以降は2%強に落ち着くとみている。雇用の見通しは3月から大きく変わらず、失業率が21年末までに4%台に低下するとした。
財政出動とワクチン普及で経済活動の再開が進み、米景気は回復している。FOMCは景気見通しを3月から0.5ポイント上方修正し、21年10~12月の実質国内総生産(GDP)が前年同期比7.0%増えると予測した。22年は3.3%の予想。
以上のほか、FRBは、金融機関がFRBに預ける預金に付ける金利(IOER=Interest Rate on Excess Reserves)を0.10%から0.15%に引き上げることを決めた。
■Interest Rate on Excess Reserves (IOER) | FRED | St. Louis Fed
■FRB、準備預金の利息上げ 短期資金の余剰に対応: 日本経済新聞
短期金融市場で資金余剰が強まり、金利低下圧力がかかっており、準備預金金利を引き上げることで過度な金利低下を防ぐ狙いがある。
誘導目標(0.00~0.25%)の範囲内であれば、本来は金融調節上の問題はないが、最近は短期金融市場での資金余剰感が強まっている。昨年以降の大量の資産購入で市中の資金量は膨張した一方、銀行は金融規制への対応で余剰資金をなるべく抑えようとしている。このため短期資金の押しつけ合いに近い状態となっている。
FRBが市中から資金吸収するリバースレポという金融調節は連日で5000億ドル(55兆円)以上と過去最大規模の利用が続いていた。
■Overnight Reverse Repurchase Agreements: Treasury Securities Sold by the Federal Reserve in the Temporary Open Market Operations (RRPONTSYD) | FRED | St. Louis Fed
FRBはこの金利も従来の0%から0.05%へ引き上げる。FRBは大量の国債購入で資金を供給する一方、短期金利を調整するために短期資金を吸収するといういびつな事態となっている。
債券を担保に短期資金をやりとりするレポ市場では金利が0%ちょうどや一部はマイナス金利にもなっている。投資家の運用資金の受け皿となるMMF(マネー・マーケット・ファンド)は金利のついた運用先が乏しくなっている。
■「経済活動と雇用、強さ増す」 FOMC声明要旨: 日本経済新聞
FOMCは、雇用の最大化と長期的な2%のインフレ達成を目指している。物価上昇率がこの長期目標を下回る状態が続いていることから、当面は2%よりやや上のインフレ達成を目指す。そうすることで、インフレ率が長期的に平均で2%になり、長期インフレ予測が2%で安定するようにする。
<私のコメント>パウエル議長は、以前にもそのように言っていた。この論で行くと、物価指数としてFRBが見ている個人消費支出価格指数の上昇が相当大きいことが当分続いても、物価上昇は容認できることになる。
ただし、物価として消費者物価を見ると、既に長期2%を越えている。
■FRB議長「強力な支援続ける」 記者会見要旨: 日本経済新聞
この中から、
・最近のインフレ率は予想を上回った
・木材、中古車など、最近のインフレ加速の要因は一時的である可能性が高い
・インフレは急上昇しているが、その後緩やかになる
・インフレが予想以上に高くなり持続する可能性もある
・インフレの経路や長期的なインフレ期待が持続して変化すれば金融政策を調整する準備がある
・2023年の政策金利見通しは決定や計画ではない(経済情勢次第で変更する)
・利上げがいつあっても政策は非常に緩和的だ
・超過準備への付利金利の引き上げなど技術的調整を実施。これは金融政策のスタンスに影響するものではない
・労働参加率の上昇には時間がかかるかもしれないが高水準に戻るだろう
・失業保険の減額は雇用創出の増加につながる
・現在は異例の事態。今後数カ月で見通しに影響を与えることも起こりうる
・(テーパリングについて問われ)もっとデータをみれば話せる
・経済情勢が目標に向かって前進すれば、テーパリングの計画発表を検討するのが適切だ
<私のコメント>イエレン長官は次のように言っている。『このところの米国の物価上昇については、バイデン政権はインフレを「極めて緊密に」注視しているとし、この問題を真剣に受け止めていると表明。物価上昇は米経済の再開がいかに難しいかを示しているとし、物価高につながっている供給網の阻害に政権は対応している。』 イエレン長官も『インフレが予想以上に高くなり持続する』リスクを認識している。FRBが言う『最近のインフレ加速は一時的だ』ということを盲目的に信用する必要はないだろう。
つまり、長期金利には上昇圧力がかかり、株価には下落圧力がかかり、ドルは上昇傾向になるだろう。後は、どのレベルまでかということだ。
なお、テーパリングについて、『もっとデータをみれば話せる』と言っている。議論の開始が近づいているということだ。
■FRB議長「物価上昇、予想より大きく」 会見要旨: 日本経済新聞
個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は4月に3.6%に達し、落ち着くまでには今後数か月かかりそうだ。要因にはエネルギー価格の上昇のほか、経済再開で消費が持ち直し物価上昇圧力がかかっていることもある。短期的な供給制約も生じており、その影響は予想されていたものより大きかった。
一時的な供給制約が和らげば、物価上昇率は我々の長期的な目標に向けて下がっていくだろう。
経済再開の過程では、需要動向の変化は大きく急速なものになり得るし、労働者確保の難しさなど供給制約は継続して供給量を左右しうる。よって物価上昇率は我々が予測を上回る値が長く続きうる。
もし物価上昇の道筋や、長期的な期待物価上昇率が実際に、長期にわたって我々の目標を超えるような兆候があれば、金融政策の構えを調整する用意がある。
記者会見での一問一答から
――失業者の労働市場への戻りが鈍いようだが、23年までの労働市場の見通しは。
「今後1~2年以内に失業率が低下し、労働参加率が上昇し、賃金が上昇すると自信を持って言える。ただ大量の雇用者が退職することで労働市場に人が戻るペースが鈍いことは確かだ。要因として、求職者のスキルと求人内容のミスマッチ、感染への懸念などが挙げられる。ワクチン接種の普及とともにこうした問題は解決し、失業給付も9月末にかけて終了することで労働者は戻ってくる」
「ただ、現在直面している労働市場は前代未聞だ。我々のデータを理解する能力を謙虚に捉えるべきだと思う。今は労働市場や物価上昇率、それを踏まえた金融政策についてきっちりとした予測を出す時ではない。数カ月たてば、我々の考えを伝えられるときがくるだろう」
「経済が好調であれば、賃金上昇は当然だ。新たな職に就く人を中心に賃金上昇がみられる。生産性や物価上昇率を大幅に上回る賃金となれば企業は値上げを余儀なくされる悪循環に陥ってしまうが、今はこうした事態は起きていない」
――どの程度、高い物価上昇率が続けば懸念材料として捉えるのか。
「物価上昇をけん引しているのは経済再開に関連する項目で、木材や中古車価格などがそうだ。供給制約で価格が一時的に上昇したが、いずれは落ち着くだろう。FOMC参加者は、23年には物価上昇率が我々の(2%)目標に近づくと予測している。その上昇は、非常に強い経済成長により、経済全般で雇用などリソースが逼迫し、インフレ圧力が高まることによる」
「期待物価上昇率に関しては長期的に見るようにしている。短期の物価上昇はガソリン価格などに左右されやすく、将来の物価上昇の予測には適切ではない。欧州中央銀行(ECB)や日銀のように、低い期待インフレ率が長期間続き、抜け出すのが困難になる状況は懸念していた。従って期待物価上昇率が許容範囲内で長期的に上昇するのは良いことだ。予測に正確な手法があるわけではなく、広範囲の物価指標の動きをみるようにしている」
「モノに対する需要は非常に大きく減速していない。サービス業も再開しており、価格は底値から戻りつつある。焦点となるのは、現在の高い物価上昇率が今後緩和されるかだ。直近の消費者物価指数(CPI)で大きく上昇したホテルや航空券などの価格も、木材や中古車と同様、大幅に上昇し続けることはないだろう」
――資産買い取りの縮小(量的緩和の縮小)を始める時期について議論したか。どのように周知するのか。
「時期については、より多くのデータが出た時点で言えると思うが、今はその予定を言える状況ではない。ただ(経済情勢について)議論したとは言える。経済は目標からはまだ遠いものの明らかに進展し、今後も続くとみている。その場合、資産購入の縮小についての計画を公表するのが適切だろう。今後の会合で景気の状況を評価し、参加者が一段の進展を認識したら、前もってその計画を知らせる」
「重視するのは、秩序だった方法で、透明性を確保することだ。我々の考えを前もって明確に伝えることに大きな意味があり、量的緩和の縮小を発表する前に伝えるよう努める。現時点で決まったことはなく、もっとデータを見なければならない。前進してはいるが、まだ遠いだろう」
――22年の経済予測を達成すれば、経済状況が大きく進展したと言えるのか。中期の政策見通しでは23年に利上げを2回実施することになるが、景気の完全回復が予想よりも早く来るということか。
「大きな進展に到達したかの判断はFOMCがするものであって、私が具体的な数字を引用して示すのは適切ではない。利上げの見込みは参加者個人の予想であり、FOMCとしての予測や計画ではない。今回の会合では利上げをいつ実施すべきかという議論はなかった。利上げの議論は時期尚早だからだ」
「ドットチャートは将来の利上げの有無を予測するためのツールとしてはふさわしくない。見通しが示すのは、景気の目標をこれまでの予測より早く達成できるとみるメンバーが増えているということだ。また利上げは今のFOMCの議論の中心ではなく、資産買い取りの方が重要だ。利上げはまだ先の話だ」
――今後、(景気停滞とインフレが同時に進む)スタグフレーションのリスクはないか?
「今年より財政支援がずっと少ない経済となるが、それでも長期的な潜在成長率をはるかに上回る非常に強い成長になると見られている。物価上昇率が想定より高まる可能性はある。だが根底にある高齢化、低生産性、グローバリゼーションといった物価上昇を抑制しているものが大きく変わるとは考えにくい」
<私のコメント>パウエル議長はグリーンスパン議長と違って謎かけ的なことを言わず、はっきり言う。それは相場の行き過ぎを作りやすい。下手をすると、今回は過度な金利上昇、過度な株価下落をもたらすかもしれない。
要は、インフレ次第なのだが、今までは一次的と言い張り、市場も信じざるを得なくなっていたが、今回はそのトーンが低下した。今までFRBに抑えつけられてたインフレに対する見方に、過剰反動がでないか心配だ。
いずれにしろ、よほど自信がなければ、株ロング、債券ショート、ドルショート、金ロングの新たな長期ポジションは作りにくい。
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