FRBにとって、今の雇用状況は金融政策決定に当たってセンシティブな要素ではない。にもかからず、債券相場は大きく動いた。市場はFRBの言うことに飽き飽きしている。


FRBは、雇用水準がコロナ前(2020年2月=152,523千人)に戻るまで金融政策は変えないと言っているので、今回どんな数値が出ようと相場に大きな動きはないだろうと思っていた。5月の非農業部門雇用者数は144,894千人で、コロナ前より760万人も少ない。
しかし、長期金利が大きく低下、株価は堅調、ドル安、金価格は上昇、となった。
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FRBの金融政策はインフレと雇用状況によって決まるが、長い間インフレは安定していたので、雇用状況がより重要だった。しかし、今は、雇用水準が低すぎる一方、物価上昇率がターゲットの2%を越えているのでインフレの方が重要なように思う。思うが、FRBは物価上昇は一時的と言い張っている。

その低すぎる雇用水準であるが、実態は失業保険給付への300ドルの積み増しや受給期間の延長といったコロナ対策の特例措置で歪められている。
物価上昇率が高くなっているのは一時的かもしれないが、住宅価格の上昇(資産価格の上昇)は放置していていいのかという問題がある。
パウエル議長は、「リーマンショックの時は住宅価格の上昇とともに家計の過剰債務があったが、今回はない」とどこかピント外れなことを言っている。つまり、高くなり過ぎた住宅価格が下落しても、家計の破たんが相次ぐような心配はないと言っているのだが、そんな問題ではない。富裕層以外は住宅が買えないような状態になりつつあることが問題なのだ。

まぁ、住宅価格がどんなに高くなろうと、経済にとって何か問題が?と言ってしまえば、それまでだが。
東京23区内で4月に販売された新築マンションの平均価格は1億180万円となった。到底、普通のサラリーマンが買えるとは思えないが、それで問題が起きているわけではない。但し、住宅ローンの返済や住宅購入資金貯蓄のため、その分消費が抑制はされている。そして、その貯蓄で(銀行経由で)国債が買われ、政府が代わりに消費しているということになる。