アルケゴス事件でモルスタも損失を出していたが、あまりに決算がよかったので発表するほど重要ではないと。また、モルスタは「アルケゴスが複数の取引金融機関を通じて同じ銘柄に投資し、巨大なポジションを作っていたこと」を知らなかったとのこと。
なお、米国の信用残増加率は危険水準を超えた。



(1)関係している金融機関は、
モルガンスタンレー(取引額No1)、クレディスイス(取引額No2)、野村、ゴールドマンサックス、ドイツ銀行、ウェールズファーゴ、三菱UFJ証券英国、UBSの8社

(2a)モルスタは、実は、合計9億1100万ドル(約1000億円)の損失があった。
米モルガン・スタンレー、アルケゴス関連で1000億円損失: 日本経済新聞
Morgan Stanley reveals $911 million Archegos loss as profit jumps | Reuters
Morgan Stanley had $911 million loss in Q1 tied to Archegos meltdown

Morgan Stanley lost $644 million by selling stocks it held related to Archegos' positions, and another $267 million trying to "derisk" them, Morgan Stanley Chief Executive James Gorman said on a call with analysts.
”another $267 million”について、
He added: “Subsequently, we made a management decision to completely de-risk the remaining smaller long and short positions,” Gorman said. “We decided we would be out of the risk as rapidly as possible, and in so doing, incurred an incremental loss of $267 million. I regard that decision as necessary and money well spent.”
と言っているが、具体的にどういうことか分からない。trading loss とも別のところで言っているので、アルケゴスへの信用供与によるもの(融資の貸し倒れ)ではないのは確かだろう。

これについて、アルケゴス、モルガン・スタンレーも損失 残る疑念: 日本経済新聞の説明だと納得だ。モルガン・スタンレーが被った損失は、バイアコムCBSの処分で6億4400万ドル、バイアコムCBS以外のアルケゴス関連銘柄売却による損失で2億6700万ドル。
後者については、3月25日から26日にかけて、いち早く動いたので、損失は相対的に少なく済んだ。

(2b)モルスタも実は売り遅れていた
ホワン氏の最大保有銘柄の一つ、米メディア大手バイアコムCBSの株価急落でことが始まった。
急落のきっかけは、バイアコムが3月22日に増資計画を発表し、24日に株価急落。
これを受けて、GSは25日からバイアコムの処分を始めたようだ。
26日のニュースではモルスタもブロックトレードを行ったように書かれていたように思うが、
「モルスタはバイアコムの共同主幹事だったので動きが取れなかった。」と、モルスタCEOのGorman氏は言っている。ちなみに、GSも共同主幹事の1社だ。みずほ証券も。
そして、モルガンは28日の日曜日夜、担保にとっていたバイアコム株を投資家との相対取引(ブロックトレード)で売却した。この取引で6億4400万ドルの損失を被ったという。
参照グラフ バイアコムCBS株価推移

(2c)モルスタの発表が遅れた、というより、しなかった。発表は、結局、1-3月期の決算発表の中で行われた。これには批判もあるが、Goman氏は、1~3月期決算の純利益は41億ドルと過去最高であり、特に発表しなくてはならないほど重要ではないと判断したとのこと。

(2d)Goman氏の発言のなかで重要なのは、『(ファミリーオフィスの運用は)誰が、何を、どこで保有しているのか把握するのがより難しい。これが学びの一つだった。アルケゴスが複数の取引金融機関を通じて同じ銘柄に投資し、巨大なポジションを作っていたことを知らなかった』ということ。

(3)フアン氏について
アルケゴス巨額損失事件、「金融規制強化」を引き寄せる転落劇の内幕(安田 佐和子) | 現代ビジネス | 講談社
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(4)危険な信用残の急増
3月のデータが発表(Margin Statistics | FINRA.org)になった。信用残(英語ではmargin debt=証拠金債務)はさらに増加、前年比増加率は71.6%になった。
過去の例では、信用残の前年比増加率が60%を越えてから5カ月から8か月後に株価の弱気相場が起きている。これからいくと、今年8月から11月頃から、米国株価の弱気相場が始まることになる。
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