この件に関しては、新事実が次々に出てくるので、まだまだ状況は変化するかもしれない。
しかし、市場は、パウエル議長を信じている。仮に一時的な株価調整があるにしても(ないと思うが)、大きな問題にはならないだろう。
とはいえ、私がしつこくメモしているのは、現在、margin debtが大きくなっており、しかも、CFDやトタルリターンスワップなど利用の投資も含めると、相当な投資資金の債務があるのではと危惧しているからである。万一のことが起きた時(万一なので、ないとは思っている)、その時振り返るためにメモしている。


アルケゴスに群がった金融機関 米当局・議会監視強める: 日本経済新聞

アーケゴス問題で世界の銀行損失100億ドルも、Wファーゴ「影響なし」 | ロイター
ウェルズ・ファーゴやゴールドマンザックス、モルガンスタンレーなどは損失を出さなかったようだ。十分な担保があったようなことを言っている。ドイツ銀行はプライムブローカー業務から手を引こうとしていたので被害が小さかったのだろう。クレディスイスと野村に問題があったのか?どうして三菱証券UFJ証券欧州が引っかかったのか?
三菱UFJ証:米顧客取引で約2.7億ドル損害、ポジション処理完了 - Bloomberg
三菱UFJホールディングス 損害に関するお知らせ(pdfファイル)

UBSもアルケゴス取引から無傷ではない-報道 - Bloomberg

ドイツ銀、素早い売却でアルケゴスショックの難逃れる-関係者 - Bloomberg

ポイント
(1)個人のファンドである。従って、年金など顧客はいない。自分の金を自分で運用して損しただけの話。
(2)それだけならいいが、ヘッジファンドが損を自己資金だけでカバーできなかったので、損を被った機関がある。その個人ファンドに、取引の執行・決済や資金調達などのサービスを提供していた野村やクレディスイス傘下のプライムブローカーである。
これが金融システムに影響するかと多少は話題になったが、その懸念は市場では全くなされていないし、実際のその懸念はないようだ。
そもそも、今回の最大の問題は、レバレッジ投機である。アルケゴスの資金(つまりフアン氏の資産)が100億ドル、この資金で500億ドルあるいは1000億ドルの総ポジションを取っていたとの見方もあるようだ。
仕組みはトータルリターンスワップの利用だ。アルケゴスはプライムブローカーに例えば、10億ドルの資金を預けトータルリターンスワップ契約で50億ドルの株を間接保有する。
プライムブローカーは表面的に自分の投資として50億ドルの株を買い、そこから得られるトータルリターン(売却損益や配当収益)をアルケゴスに渡すとともに、50億ドルの金利を支払ってもらう。つまり、トータルリターンと金利のスワップだ。トータルリターンがマイナスになれば、預かっていた10億ドルの資金からマイナス分を払ってもらう。プライムブローカーにはリスクのない取引のはずだ。ところが、今回は、そのマイナス分を補填するのに預かっていた資金では足りなくなった。そこで、プライムブローカーは追加の資金(追証)を入れてもらうように要請したが、アルケゴスはそれができなく、預かっていた資金で足りなくなった分がプライムブローカーの損失となったということだ。
結局今回の問題は、レバレッジが大きすぎた。どれだけのレバレッジを取っていたか不明だが、10億ドルで50億ドルの株を買えば(5倍のレバレッジ)、わずか20%の株価下落で元手が吹っ飛ぶ。一般の信用買いではこれは最大2倍だ。そして、金額が大きすぎた。そして、ファミリーオフィス(同族資産で、広く集められた資金でない)で当局への届け出や情報公開の必要がないということだ。
ということで、問題は、アルケゴスとプライムブローカーだけの話なのであるが、以下(3)以降へ。

(3)ファンドの清算で、大規模な売りが出て、一部の株価が大きく下落した。しかし、そもそも、それまで、そのファンドに買い上げられて株価は大きく上昇していた。だとしても、株価下落の影響を受けた投資家はいるだろう。
(4)このヘッジファンドの資金が株式市場からなくなるので、小さいながらも、市場に影響はあるだろう。
(5)これを機に、margin debtがITバブルやサブプライムバブル時のように膨れ上がっているが、それが巻き戻される可能性がある。
(6)margin debtの統計データはあるが、今回の件ではCFDが利用されていたようだ。つまり、統計でわかる規模以上にレバレッジを効かせた買いがあるということだ。逆回転した時は怖い。
(7)今回の件、GameStopショックと、ヘッジファンドやプライムブローカーに規制がかかる可能性がある。但し、それは株式市場に影響はないだろう。
コラム:アーケゴス問題、ヘッジファンド規制強化待ったなしか | ロイター
(8)今回の事件の始まりは、marigin callの発生。つまり、株価の大幅下落であるが、株価の下落は予期せぬことで起こりえる。今回は、予期せぬこととは言えない事態で始まった。
バイアコムCBSの株価は買い上げられていた。バイアコムCBSはストリーミングでNetflixなどに後れを取っており焦っていた。そこでストリーミング戦略のための資金調達のための増資を発表した。しかし、増資は株のダイリューションになるので、それでなくても割高だった株価は大きく下げた。
バイアコムCBS株、最高値から55%下落-ブロック取引が追い打ち - Bloomberg
米・テレビ業界は、なぜストリーミング移行に苦戦するか?:バイアコムCBSの場合 | DIGIDAY[日本版]


話は全く変わるが、「謎の日本株の買い手」が気になっているが、日経225レバレッジファンドなどによる先物買い、私募・公募投信の設定が相次いでいるか、などかなぁ?と思っているが、ひょっとしてCFD、トータルリターンスワップなどによる日本株買い(買い手は日本の金融機関か?)かもしれないなぁと、今回の件を見て思い始めた。

これも関係あるのだろうか?
三菱UFJ証、損害の恐れ 米顧客に起因、330億円 - 芸能社会 - SANSPO.COM(サンスポ)