Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

2022年06月

為替相場を見ている人には必須の基本情報。

相場は需給で決まるが、為替相場の需給を動かす大きな要素は金利差。
為替相場と金利差の関係はFXにとって最も重要で基本である。
常にその状況を把握する必要がある。
その関係は恒久的なものではない。しばしば形を変える。
定期的に、その関係の情報をフォローしている。

最近の大きな変化は、世界経済の減速感=商品需要減速観測=金利低下 である。
これが、為替相場にどういう影響を与えるか?

Bloomberg Industrial Metals指数は、aluminum, copper, nickel and zincで構成される工業金属価格指数である。急速に軟化している。供給サイドにも問題はあるが、需要がそれ以上に細るという観測なのだろう。つまり、景気の急減速を市場は見ている。

インフレは依然強いが、一方で景気減速感から金利動向は落ち着かない。
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以上のように、各国の金利の動きに変化があったが、そのなかで為替相場はどう動いたか?

以下、定例のグラフ(ドル/円、ユーロ/ドル、ポンド/ドル、豪ドル/ドルとそれぞれの金利差との相関)を掲載する。

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FX必須情報 為替相場と金利差 2022/06/24 - Kecofinの投資情報 - GogoJungle

5月 消費者物価指数 前年同月を2.1%上回る 2%超は2か月連続 | NHK | 原油価格
消費者物価2.1%上昇 5月、エネルギー・食料品高騰: 日本経済新聞

・他の主要先進国に比べると物価上昇はまだ鈍い。
・今の物価上昇は賃金の上昇や需要の増加といった、経済の好循環を伴ったものではない。
・物価高騰の原因は新型コロナウイルスの感染拡大とロシアのウクライナ侵攻。政府が取り組む物価対策に理解を要請。

日銀は、この機会に、物価上昇⇒国民の賃上げ要求世論高める⇒賃上げ⇒さらに物価上昇 をもくろんでいる。たぶん、物価上昇を起こす最後のチャンスだと思っているだろう。

2013年の超金融緩和は失敗した。デフレ脱却のために金融緩和したのに、同時に消費税増税でブレーキを踏んだからだ。その二の舞はしない。せっかく、物価が上昇してきたのに、ここで水を差す(物価抑制策をとる)ようなことはしない。国民の不満が高まっているが、それこそが賃金引き上げの原動力になる。

それに、日本は米国などと違って手の付けられないほどの状態にはならないと考えているだろう。
すでに、原油価格など国際商品価格上昇は止まってきている。過度な賃上げがなければ、ほどよい状態(2%の物価上昇)になるだろう。
今はまだ賃金が上がっていないので、僅かな物価上昇も国民は我慢できないが、賃金が上がってくれば2%程度の物価上昇は望むところだ。物価が上昇すれば。その分消費税も増え、財務省もウェルカムだろう。

ホント 物価は上がっていない こんな国他にない
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米国や欧州とは違う
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日本の物価上昇の2大要因は原油価格の上昇と円安
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両者(原油価格、実効為替レート)で物価上昇率を推計すると、
原油価格は半年、為替レートは1年、物価に先行するので、6カ月程度先までの物価上昇率を推計できる。
これだと、物価上昇率は今がピーク。推計値より実際のデータが上に行っているのは、(1)勢い、(2)海外物価上昇が伝播してきている。中古車価格高騰止まらず、円安で海外需要増加-5万円の車も争奪戦に - Bloomberg、(3)長い間なかった供給側の問題による物価上昇 だろう。
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今の日本の物価上昇は、「食品など生活必需品の値上がりが目立つ構図」で、総合物価指数が示すデータよりも、家計に厳しい。しかし、それがますます賃上げ要求世論を高めるので、日銀は内心喜んでいるだろう。勿論、ず~と続けば問題だが、世界経済成長鈍化に伴って、早晩収まってくると考えているだろう。既に、国際商品格は低下に転換した感がある。

以上は、まぁ、穿ち過ぎた見方だ。私自身もそう考えているわけではない。
物価上昇を放置して国民の不満を高め、賃上げの原動力にしようとするなど、そんな不埒なことはあってはいけないだろう。

それはそうとして、夏ボーナス13.8%増、経済回復で4年ぶり 経団連集計: 日本経済新聞
しかし、
夏のボーナス大幅増加も個人消費への影響は限られる | 2022年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

円安はいいことなのか悪いことなのか?
対外産業にとっては収益をかさ上げする。
対内産業にとっては、コストが上がり苦しい。
対内産業のカウンターパーティーになる消費者にとっては苦しい。
トータルでどうかという問題ではない。

昔は、円安⇒輸出増⇒生産増&円高 となって、好景気とともに円高になり皆ハッピーになった。
今は、円安になっても輸出増にはならない。対外産業の為替益が出るだけだ。経済のメカニズムが壊れている。
このことは多くの人が指摘しており、放置すれば経済は崩壊する。

日銀の放置政策はタイトロープだ。
でも、これしか手がないのだろう。
そこまで日本経済は追い込まれていると思う。
成功を祈る。









6月16日、米国で注目される経済指標が発表された。6月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数だ。
どういうわけか、(たぶん)日経は報道しなかった。FOMCの翌日で忙しかったのだろう。

6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は▲3.3となった。
支払い価格指数は64.5と依然高水準。
景況感は、物価高の景気後退、スタグフレーションだ。
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これは、ISM指数が50以下に落ち込むことを示唆している。(ISM6月データが50以下になることはないだろうが)
ISM指数が50以下になれば、それは企業収益が減益になることを意味するだろう。株式市場は今はそんなことは考えていない。
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半年先の見通しは悲惨だ。
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半年先の見通しがここまで落ちるのは、
80年の超インフレ後の金融引き締めによる景気後退。
90年のインフレ圧力が高まりに対して金融が引締められた影響による景気後退。
00年のITバブル崩壊。
10年ではなく、08年のリーマンショック。
の次である。
今回は、20年でなく、新型コロナウィルスパンデミックに対する大規模経済金融対策で延びた。
景気10年サイクルが順当に起きるということだろう。
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17日に5月の鉱工業生産指数が発表された。
やや減速感はあるが、堅調が維持されていると言っていいだろう。
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しかし、これから半年以内には米国景気は大きく減速し、株価は更に下落するだろう。









以下は、メモ 無視してください。

1980世界経済の動向
80年の米国経済は戦後最大の落込みを記録した。物価は世界的に騰勢を強めていた。各国はインフレ抑制を最優先課題とし,引締め的な政策スタンスをとった。インフレが高進する中で,米国の金利急騰によりその他諸国との金利格差が拡大したため,米ドルは強含みに推移した。西独マルクは,経常収支の悪化などを背景に下落を続けた。80年の先進国経済は,石油価格上昇の影響が経済各面に浸透し,物価が高水準で推移する中で,景気後退色が強まり,困難な状況が続いた。


2008年からの景気後退は住宅バブルの崩壊が、
2001 年にはITバブルの崩壊が、
1990 年には商業用不動産バブルの崩壊 中小金融機関S&Lの経営破たんが顕在化
https://www5.cao.go.jp/keizai3/sekaikeizaiwp/wp-we91-1/wp-we91-00202.html
アメリカ,イギリスでは主に景気の過熱からインフレ圧力が高まり88年以降金融が引締められた

2022年06月16日 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社が当社の秘密情報を漏洩した件
によると、

イオンとコンサルティング契約を締結していたデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(DTC社)が7&iに、イオンの秘密情報を提供し、さらに、その情報の一部が週刊ダイヤモンド022年2月12日号『特集 セブン DX敗戦』に掲載されていることが判明した。
たぶん、DTC社はイオンとも7&iともコンサルティング契約を結び、イオンから得た情報を7&iに回していたのだろう。そりゃぁ、イオン激おこ。

本事案につき、DTC社から、「お客様情報の漏洩について」が6月16日付で開示されている。

DTC社は、イオンの秘密情報を含むDX戦略に関する内部資料の一部を、秘密保持条項に違反し、イオンの社名やロゴが掲載された形でセブン社の会議資料として提供した。 しかも、その資料の一部が週刊ダイヤモンドに掲載された。

【スクープ】セブン&アイのDX、担当役員は失脚しIT新会社は白紙!内部資料で暴く「完全崩壊」全内幕 | セブンDX敗戦 | ダイヤモンド・オンライン
・【スクープ】セブン&アイが宿敵イオンのDX戦略をベタ褒め!?抵抗勢力「DX部門解体」の策略 | セブンDX敗戦 | ダイヤモンド・オンライン
デロイトがセブン&アイのDXで「両手取引」!?内部資料で判明したコンサルの仰天手口 | 勝ち組に死角! コンサル大乱戦 | ダイヤモンド・オンライン


秘密漏洩はよくある。それは皆知っている。しかし、今回はあまりに大胆。「社名やロゴが掲載された形で競合会社の会議資料として・・」普通は、漏洩元がわからないようにするし、社名やロゴは消すだろう。信じられない。

話は変わるが、その昔、私は某生保に勤めていたが、企画部は業者から某トップ生保の内部資料を買っていた。その資料は、某トップ生保からでたごみをあさって入手したものとのことだった。あの頃はシュレッダーもなかったような?(あっても、一般的ではなかったような?) 価格は100万円と聞いた記憶がある。

またまた、話は変わるが、例の食べログの件で、twitterに、こんなことが書いてある。
本当か嘘か知らないけど、面白い。
https://twitter.com/fallindebu/status/1537625624549806081

食べログ側も問題あるとは思うけど、訴えたお店側も昔からステマやってた、
食べログがステマレビュアーの点数を反映しないよう変更→お店の点数が激減→たくさんお金使って点数を上げてきたお店が激おこ、というのが真相な気がする。

要は、一部の店が一部の人にお金を払って、食べログにいいレビューをしてもらっていた。
これにより、その店の評価点は高くなっていたが、食べログは、こうしたレビューを評価点に反映しないようにアルゴリズムを変えた。その結果、評価点は下がった。
ということだ。
だとすると、食べログの「優越的地位の乱用」とは言っても、複雑だ。
食べログが、事前に「ステマレビュアーの点数を反映しないよう変更します」と言っておけば問題なかったのだろうが・・・・
ステマレビューを確実に見破るのも難しいし、食べログに金を払ったら高得点にしていたかもしれないし、このビジネスモデルは成立しにくいようだ。
金融では、格付け情報は、格付け会社が格付けするが、食べログでは消費者が格付けする。やっぱり、人の褌で相撲を取るのは難しい。

いずれにしろ、twitter情報なので、本当のことは知らない。
知らないが、面白い。









スイス中銀は6月16日、予想外の利上げを行った。
Swiss National Bank (SNB) - Current interest rates and exchange rates
中央銀行 政策金利 - Investing.comからSNBを選択
政策金利を0.5%上げー0.25%とした。インフレが抑制不能になることを懸念し、2007年9月以来15年ぶりに利上げに踏み切った。
ジョルダン総裁は記者会見で「本日利上げしなければインフレ見通しは大幅に上昇する」との見方を示した。5月に約14年ぶりの高い物価上昇率を記録したことを受けたもの。
さらに、「近い将来に政策金利のさらなる引き上げが必要になる可能性がある」と述べた。
また、「現在の環境では、物価上昇が最近までの事例よりも早く伝わり、また受け入れられやすくなっている」と指摘。「インフレ率が2%を超える状態が長く続くと、2次的効果が定着する恐れがある」とし「インフレの進行を考慮しないのは怠慢だ」と述べた
スイス中銀は今年と2023、24両年のインフレ率見通しを2.8%と1.9%、1.6%とし、3月時点予想のそれぞれ2.1%と0.9%、0.9%から上方修正した。
また、「現在の状況には為替レート動向を含め多大な不確実性がある」とした上で、「スイス・フランが過度に上昇するならば外貨を買う準備があるし、下落する場合は外貨売りも検討する」と述べた。(為替介入すると公言している。黒田さんは羨ましいだろう)
スイス中銀が07年来の利上げ、政策金利マイナス0.25%に-予想外 - Bloomberg
スイス中銀が15年ぶり利上げ 政策金利マイナス0.25%に: 日本経済新聞

決定を受けてスイスフランは急伸した。
あすに日銀決定会合の結果発表を控え、円も円売りポジションの巻き戻しが起きている。
また、スイス中銀が予想外の利上げに踏み切ったことで、何が起きるかわからないと、世界的にリスクオフ(ポジションをとらない。ポジションの中立化。)になっている

コア(生鮮食品とエネルギーを除く)物価指数前年同期月比上昇率は5月で1.7%。
もうちょっと様子を見れないこともない状態。
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対ユーロでは為替は堅調。通貨安を懸念する必要もない。どころか、堅調気味だ。
通貨防衛のための利上げではない。
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それでも利上げした。
日銀はどうするか。今回はともかく、次回は利上げに追い込まれると思う。
円安対策ということではなく、需要抑制の為でもなく(本来は、需要喚起したいところ)、とにかく、インフレに対応しているというジェスチュアの為である。
世界の利上げの嵐の中で、ガラパゴス状態にはなれないだろう。
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