Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

2022年05月

値上げラッシュ、価格はどうなる?:日本経済新聞
食品値上げ、年1万品目突破も 6月以降、規模が拡大:時事ドットコム


統計局ホームページ/家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)に、基礎的支出・選択的支出 という項目がある。
基礎的支出(必需品的なもの)は、食料,家賃,光熱費,保健医療サービスなど。総支出の約60%。
選択的支出(贅沢品的なもの)は、教育費,教養娯楽用耐久財(パソコンなど),月謝など。
それぞれについて、前年同月名目増減率、対前年同月実質増減率のデータがある。
なので、名目増減率から実質増減率を引いて価格上昇率が得られる。
(ひょっとして、こんなことをしなくても、デフレーターが発表になっているかもしれない?)

とにかく、そのようにして、基礎的支出と選択的支出の価格変動率を見ると、基礎的支出(必需品的なもの)の価格上昇率は、消費増税があった2014年を除くと、原油価格が暴騰した2008年より高くなっている。そして、2008年と違って、ここからも価格上昇が続きそうなことで、物価上昇感が極めて強い。
選択的支出(教育費,月謝など)の価格が下がっているということは、収入が増えていない世帯も多いということだ。
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ここからも物価上昇が続きそうだというのは、ここから円安の影響が出てくると思われるからだ。
ここまでの物価上昇は原油などの商品価格高によるもので、ここからは円安の影響が出てきそうだ。
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それに、今回が今までと違うのは、
今までは、食料品や原油価格が値上がりしているときは、円高であることが多かったが、今回は、食料品や原油価格上昇と円安が揃いそうなことだ。
今回の物価上昇は生活に大きくこたえそうだ。
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玉川さんは、「賃金が上がるのは普通で、今までが(物価が上がらなかったのが)おかしかった」とか言っているが、ここに更に賃金が上がって、その分も物価が上がれば、もうどうしようもない。
日本経済ピンチかも。










「資産所得倍増プラン」を年内にも策定の方針、貯蓄から投資へ-報道 - Bloomberg
貯蓄から投資へ、年内にも「資産所得倍増プラン」…「新しい資本主義」原案 : 読売新聞オンライン
骨太の方針 NISA拡充など「資産所得倍増プラン」盛り込みへ | NHK | 経済安全保障

何を言っているのかわからなかった(それに、言うたびに違う)「新しい資本主義」のグランドデザインが示されたようだ。
・「人への投資(どこかで聞いたことがあるような?)」を重視し、非正規雇用を含む約100万人を対象に能力開発や再就職支援を行う
・貯蓄に偏る個人金融資産を投資に振り向けるため、「資産所得倍増プラン」を策定する
資産所得倍増プランとは、所得倍増が目的ではなく、家計の金融資産を貯蓄から投資に振り向けることが目的らしい。(これも、大昔から言われている)

ただ、中身はいいところがある。
▽「出世払い型奨学金」を本格導入
給付型の奨学金や授業料の減免などの制度について、中間所得層で子どもの多い世帯や理系の学生に対象を拡大する。
結婚や子育てなどを考慮して柔軟に返還できる「出世払い」の仕組みを創設する。

▽創業時に信用保証を受けていれば経営者の個人保証は不要に
経営者の個人保証は、スタートアップ企業や中小企業の成長の阻害要因だった。
銀行が、それなら貸さないというようにならないように注意して導入すべきだろう。

▽基金などを活用し、政府予算の単年度主義を打破
財政がわかりにくくならないよう注意すれば、いい制度だ。
どんぶり勘勘定にせず、基金ごとに管理する。
問題は、この基金の管理を誰がやるかだろう?直接的には所管官庁になるが、もう一段上からの管理も必要だろう。

▽「人への投資」、具体的には一層の賃上げに向けて、賃上げ税制の活用促進や賃上げを行った企業を優先して政府調達を行う。
賃上げ促進は必須の課題だ。しかし、無い袖は振れない。名目GDP拡大をいかに拡大するか?それは失われた25年からの脱却を意味する。
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▽「貯蓄から投資」へのシフト
株に投資すれば1~2%の配当利回りがある。ゼロ金利よりはましだろう。
しかし、貯蓄の大部分が老人によってなされており、老人が株式投資を増やすことはないだろう。
潜在的なNISAの力はどのくらいなのだろう?

以上は、全て投資だ。人への投資(奨学金制度など)、企業への投資(スタートアップ企業支援など)、貯蓄から投資へ(貯蓄を消費に向けるのではなく)、基金の創設もプロジェクト支援だ。

消費が増えるようにするこという概念があるのだろうか?
消費がなければ、企業は設備の拡大はしない。(更新だけだ)
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日本の問題は消費が停滞していることだ。消費が停滞しているのは賃金が停滞しているからだと鶏卵論争にはなるが・・・・

足元で、日本の消費は報酬にキャッチアップする状態にある。(米国と逆。これが一時的にも日本株投資を支えている)
この流れを助長していけば、波に乗れるかもしれない。

これまでの岸田総理の話を聞いてきた限りでは、岸田氏は歴代総理の中では理解力は低いと思う(私の感想)。
いいブレーンがついてほしい。







電気料金高騰「再エネ賦課金」に疑問の声高まる 岸田首相に「聞く力」はあるか
再エネ賦課金はひどい税だ。上記記事に詳しい。

消費税は安定財源、触ること考えていない=岸田首相 | ロイター

金融所得課税見直し「決して終わったわけではない」-岸田首相 - Bloomberg

日本の税収は伸び続けている。
GDP比でも拡大している。これはつまり、財政緊縮ということだ。バブル崩壊後から課税を引き下げてきたが、2010年度(2010/4-11/3)から増税に転じてきた。
黒田さんになって「私がとことん金融緩和して経済を拡大せますから消費増税しましょう。間違いありません。」と安倍さんに消費税率を引上げさせたことも大きい。

26年度にもPB黒字転換へ、コロナ禍後の税収上振れ―SMBC日興 - Bloomberg
SMBC日興証券の宮前耕也日本担当シニアエコノミストが、26日付でリポートを出したらしい。
26年度にもプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)は黒字へ転じる見通しだとのこと。
いよいよ政府、財務省の目標に近づいた。
いろいろ財政出動をやってきて、経済に配慮してきたように見せかけて、しっかりやることはやってきた。
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なお、宮前氏は
21年度税収は63.9兆円の税収見積もりを66.6兆円程度に大幅増加となることを見込んでいる。
22年度税収は65.2兆円の税収見積もりを68.2兆円程度に増加することを見込んでいる。






前回 東急の逆襲

東急vs小田急シリーズの6回目になる。
このシリーズ、理由はわからないがPage Viewが多い。面白くてやめられない。

2020年、コロナ禍で、渋谷に集中投資した東急を売って小田急に買い換えるという動きから、小田急は高値更新。ファンダメンタルズからは、これはおかしかった。
2021年に入って、その巻き戻しが起きた。

新型コロナウィルスパンデミックも落ち着いてきて、値上げもなされようとしている今、最近の小田急がここまで売られる理由はないと思う。あまりに長々と下落が続いたので嫌気がさした投資家がいるのだろう。

足元では、東急も、対TOPIXで下落しており、???だ。

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食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合消費者物価指数は前年同月比+0.1%。

携帯電話の通信料下げという物価を押し下げる特殊要因はほぼなくなった。
(携帯大手各社は21年春に格安プランを導入していた。)

日銀は2%の物価上昇を目標に掲げているが、いまの物価上昇は賃金の上昇や需要の増加といった経済の好循環を伴ったものではない。
物価上昇の背景は、ウクライナ危機などによる原油や穀物価格の上昇、新型コロナウィルスパンデミックによるサプライチェーンの混乱などが背景。

ただちに利上げにはならない。そうでなくても需要不足で経済が停滞しているのに、需要を抑制するような政策は不適当だ。米国とは事情が全く異なる。

それはそうとして、低金利は、考えようによっては金融引き締めだ。金利が低下することによって貯蓄者が得る金利収入は減る。その分、消費は抑えられる。マイナス金利で破たんする地銀も出てきた。金利がないので、地銀などはリスクもとれない。銀行の諸手数料も上がっている。
要は、低金利によって、家計から借り入れ者(国、企業、住宅購入者など)に富が移転しているのだ。なら、国はそれを財政で家計に還流しなくてはならないのに、逆に増税、社会保険料引き上げをしている。
なので、私は、住宅ローンを抱えている人には何らかの支援をしながら、金利を引き上げるのは賛成だ。問題は、貯蓄者の大部分が老人で、金利を引き上げても消費に回らなさそうなことだ。
なので、国は貯蓄して消費しない金なら、利息を付ける必要はない。貯蓄して使う気がないなら、国が借りて財政支出に回そうということが起きている。この借入を「有る時払いの催促なし」の借金という。国税庁は「実質的に贈与」としている。何を言いたいかというと、既に、実質金融課税がなされているということだ。

どうでもいい話が長くなったが、グラフを見てほしい、円安が物価上昇を引き起こすとすればこれからだ。しかし、過去を見ると、2014年の消費税増税の時を除いて円安でも物価上昇(前年比で0%以上)が起きていない。今回はどうなるか?

ここから先は、今考えると、頭がこんがらがるので、今後のデータを見ながらゆっくり考えるとしよう。

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