Kecofinの投資情報

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2022年03月

円安の先に危惧される「株式の死」、数十年に一度の長期低迷シナリオを覚悟せよ

ダイヤモンド・オンラインに寄稿しました。

ウクライナ危機の収束が見えてきたこと、FRBの利上げの見通しが明確になったことから株価は上昇している(市場は不透明を嫌がる)が、利上げの影響が秋ごろから出てきて、米日とも株価は大暴落の予想という話です。

円安の背景、その円安を受けた日本株相場というのがテーマで書いていたのですが、秋に株価大暴落という結論になってしました。

そのため、その背景については詳しくは書いていません。
次については、改めて。

(1)米国株価のGDP比は歴史的に異常に高い。特に、新コロ後の米国ゼロ金利、量的緩和が株価を一段と押し上げた。(図 米国株価のGDP比)
(2)歴史的に、大まかにインフレになる時に、この異常さは修正される。(図 米国株価のGDP比とインフレ率)
(3)タイミングをもう少し細かく見ると、利上げの影響が株価に現れる時になる。
利上げの影響は、タイムラグをもって株価に現れる。(図 金利に変化とISM指数)











(1)◇ESG投資への逆襲? 防衛関連株の上昇に映る潮流変化(日本株ストラテジー)
地政学リスクの高まりがESG投資に変化をもたらしています。今年に入り、グローバル株式に対してESG投資の運用成績が振るわない中、ESG分野では長らく物議を醸してきた防衛関連株に対する見直しが進んでいます。仮にウクライナとロシアで和解が成立したとしても、世界的に防衛強化の流れは継続しそうです。

(1b)日本株運用全体に占めるESG投資の割合が7割に上昇(ESG投資実態調査2021②)

(2)
ゼレンスキー大統領が現状変更(EU、NATO加盟)を画策
⇒プーチンはそれを許さず
⇒しかし、バイデン大統領の支持を得てゼレンスキー大統領がロシアに対抗
⇒プーチン大統領は武力による現状変更を行おうとしている。

結局決め手は、バイデン大統領のサポート。
そのバイデン大統領は、今になって、
バイデン米大統領、ウクライナでの戦争で食糧不足は「現実化」へ - Bloomberg
バイデン米大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻の結果、世界は食糧不足に見舞われるだろうと述べ、増産がG7首脳会議の議題の1つだったことを明らかにした。
同大統領は「制裁の代償はロシアだけに科されているわけではなく、欧州諸国や米国を含む極めて多くの国も科されている」と指摘した。
ウクライナとロシアはいずれも小麦の主要生産国。ウクライナ政府は既に、戦争で作付けと収穫がひどく混乱していると警告している。

そして、ウクライナ戦争は、図らずも(図ってか)欧州の弱体化(エネルギー不足)をもたらし、米国のシェール産業の復活の基盤となった。また、米国の武器産業に恵みとなった。
古いデータだが、
武器製造・軍事サービス企業の2017年売上トップ10社
1. ロッキード・マーティン(米国)/449億2000万ドル
2. ボーイング(米国)/269億3000万ドル
3. レイセオン(米国)/238億7000万ドル
4. BAEシステムズ(英国)/229億4000万ドル
5. ノースロップ・グラマン(米国)/223億7000万ドル
6. ジェネラル・ダイナミクス(米国)/194億6000万ドル
7. エアバス(欧州連合の4カ国)/112億9000万ドル
8. タレス(フランス)/90億ドル
9. レオナルド(イタリア)/88億6000万ドル
10. アルマズ・アンテイ(ロシア)/85億7000万ドル

世界の軍事企業ランキングTop20│ミリレポ|ミリタリー関係の総合メディア

(3)侵攻前の動き
当時の新聞には記事があるが、最近の解説記事には以下のことが触れられていない。見方によっては、ウクライナが先に仕掛けたとも思える。
21年3月、ゼレンスキー大統領はドンバス地域やクリミア半島を奪還することなどを目指すための国際協力の枠組みである「クリミア・プラットフォーム」を提唱。G7外相がクリミア・プラットフォームに肯定的な声明を発表し、ロシアは危機感を強めた。

2021年10月26日ドネツク州で、ウクライナ政府軍は親露派武装勢力に向けてドローンによる攻撃を初めて実戦で行った。
ドンバス戦争の停戦協定により、ドローンを含む航空戦力の使用は禁止されているため、ロシアは停戦協定違反としてウクライナを即日非難し、協定に関わったドイツも翌日にウクライナを非難した。

ゼレンスキーは欧米諸国から忠告を受ける中、意に介さず「領土と主権を守っている」という声明を発表。ドローン攻撃は、ロシア大統領プーチンの行動に口実を与えることになった。すなわち、ロシア軍が親露派を守り、ウクライナのNATO加盟を阻止するための行動である。

アメリカは「ウクライナにはウクライナの主権がある」「ウクライナがNATOに加盟するかしないかはウクライナ政府が選ぶことであり、それについてロシアが口出しするのは間違っている」と指摘した。

そして、欧米は、ロシアが軍事侵攻した場合、金融・経済制裁を発動すると警告した。
(米国はやる気満々)
警告していた主な内容は、
①ロシアの銀行をSWIFTから排除
②ロシアの銀行のドル取引の禁止
③米国の技術を使って製造された製品をロシアに輸出するのを禁止、
④米国金融機関によるロシア国債の流通市場での購入禁止
⑤ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の停止
⑥個人や法人の資産凍結や取引禁止
⑦ロシアエネルギー企業の資金調達の制限
9)ロシアへの投資制限
などなど。

12月以降、ロシアはNATOに対し、ウクライナがNATOに加盟することの停止、旧ソ連地域への軍事活動縮小を求めた。NATOはこれを拒否。
米国などは東欧の加盟国に軍を派遣しはじめ、ウクライナにも武器を供与するなど、臨戦態勢に入った。
米欧はウクライナに戦闘部隊を派遣しない方針で、物資提供がウクライナに対する支援。

2021年1月25日、日経は、ロシアのウクライナ侵攻のタイミングは地面凍結の関係から3月中ではないかと報じ、米国のシャーマン国務副長官は1月26日、「ロシアは今から2月中旬までの間に攻撃を計画いる」とした。加えて、同氏はロシアが中国政府への配慮から北京冬季五輪の期間中のウクライナ侵攻を回避する可能性に言及した。

2022年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻開始

今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、決して奇襲ではない。
米国は準備万端だった。
なので、制裁も直ちに行うことができたし、金融システム不安が起きることもなかった。

ロシアのやっていることは目に余るものがあるが、ゼレンスキー大統領にとっては想定内だろう。
結局、わからないのは、バイデン大統領の頭の中だ。

(4)ゼレンスキーは「英雄」か? ウクライナに武器と金を送ることは本当に「正義」なのか?(川口 マーン 惠美) | 現代ビジネス |
・いったい各国の国会議事堂は、いつからウクライナ劇場になったのか。
・シナリオライターが誰で、何の目的で議会演説をアレンジしているのでしょうか? 
・彼のそばにアメリカ人の補佐がいると聞いています。
・彼は、ウクライナは世界の民主主義の防衛のために戦っているのだからと、援助を受けることが、当然の権利であるかのように。
・今、戦争当事者の一方を善と決めつけて、援助一本槍でいこうとしている欧米、および日本の態度には大きな落ち度があるのではないか。
・ゼレンスキー氏は、いったい何人までなら、民間人を犠牲にしても良いと思っているのだろう。
・ 私にはどうしても、氏は誰かの指令のままに動いており、脚本通りの勇猛な大統領を演じているだけのような気がしてならない。ルックスもどんどん野生的になって、闘士の役にすっぽりハマっていく。
・欧米は盛んに武器と財政支援を行い、しかも、それをすることが正義のような顔をしている。日本はいつも通り追随。
(注)日本は追随しているのではなく、台湾や日本に有事があったときは「よろしく」ということだ。今はなにもせず、日本に有事があったとき、助けてくれは通らない。

・本来ならば、どの国の政治家であろうとも、まずは殺し合いをやめるよう、戦闘モチベーションの高すぎる大統領を説得するのが筋ではないか。それなのに、皆で拍手。これ以上、犠牲者を増やし、武器商人を儲けさせてどうする!?
・あれほど戦争反対だったドイツメディアが、キエフの街で、「私は逃げない。最後までここに止まって戦う」と言っている若い女性のことを、ものすごく肯定的に報道しているという不思議。それだけではない。平和主義のドイツ国民が、武器援助にさして反対もしない。
戦後のドイツでは、ヒトラーのトラウマのせいで、少しでも軍国主義を連想させるものは全てご法度だった。勇敢に戦うことも、国のために命を捧げることも、この国では美徳ではない。
お国のために壮絶な戦死を遂げた人間が英雄扱いされた時代は、とっくに終わっていたはずなのに、今、皆がウクライナのジャンヌ・ダルクに魅入っているのは、いったいどういうことだろう。いつからそれが美談になったのか?















各国の株価が急回復している。
20220319a

背景は、
(1)ショートしていた筋の買戻し、一部は踏みあげられている。
きっかけは、
(A)ウクライナ紛争の停戦の可能性が出てきたこと。
(B)FOMCが予定どおり通過したこと。

(2)年金等のリバランス買い

以上だけなら、上げはほぼ終わり、また下げに転じそうだ。
(ア)利上げ、商品価格高、原材料不足などで、景気は減速方向
(イ)金利が配当利回りを上回ってきた。配当の伸びが低下すれば、株の魅力は低下する。

(3)しかし、景気刺激策が出てきている。
(A)中国が景気刺激を強めている。(預金準備率の引き下げや、規制をやや緩和する動き)
(B)これは景気刺激策というより、戦争特需。あまり予想はしていなかった。
20220319b
出所 欧州、相次ぎ国防増強 ドイツ大転換、北欧なども続く - 産経ニュース

ドイツ、国防費をGDP比2%超へ ロシア侵攻で方針転換: 日本経済新聞

最もインパクトがあったのはドイツ。
2月27日、ドイツのショルツ首相は国防費を増額すると発表。2022年の予算から緊急で1千億ユーロを連邦軍の装備強化などに充てる。さらに、GDP比1.5%ほどにとどまる国防費を、今後は毎年2%以上に引き上げる。戦闘機や軍艦、兵の装備に投資し、連邦軍を強化する意向だ。
以後、各国に波及していっている。

また、国際的な「ウクライナ連帯基金」創設がEUと協議されている。
ただちに必要な生活物資、戦後の経済復興を支援する構想だ。
寄付は世界各国から募る。

こういう話がでてきて、現実になっていくと、株価はまた一段高になる。

コロナのときは、特殊事情でとんでもない額の財政政策と金融緩和策がとられ、株の大幅高を招いたが、
今度は、ウクライナ危機という特殊事情で、大きな軍事予算拡大、同国の復興策がとられ、株価をまた引き上げるということになるかもしれない。

コロナで、金融緩和は限界まで行われ、財政も大幅に拡張された。何があっても、これ以上は無理なはずだったが。ゼレンスキ大統領の前では、無理も道理になるようだ。

またまた多くのストラテジストの株価予想が覆されるかもしれない。
コロナ対策や、ウクライナ復興策などは、通常の経済・投資分析では対応しにくい。

念のため、私は、それでも、株価の一段高は考えていない。
今回、商品価格高で、各国とも経済は窮屈になっているはずだ。
なかなか、復興資金をねん出するのは容易ではないと思うからだ。
日本は狙われているが、日本も苦しい。
資金を出せるのは、産油国など資源国だ。
もし、サウジが出すというなら、・・・・























(1)ゼレンスキー大統領が日本の国会でオンライン演説をするようだ。
質問できるなら、尋ねてもらいたいことがある。
ロシアの軍事侵攻は予想していたと思うが(バイデン大統領は、ロシアの侵攻があっても派兵しないと言っていた)、
(A)国民がここまでひどい状況になることは予想していたのか?
(B)ロシアの軍事侵攻のリスクはわかっていても、ロシアから解放されることのほうが重要なのか?
(C)侵攻してきた場合、単独ではロシアの相手にはならないので、世界を巻き込むつもりだったのか?

(2)ゼレンスキー大統領は、米議会で、真珠湾攻撃を思い出してほしいと言った。
日本の国会演説では、「かつて、日本は今のロシアと同じことをしたのです。その罪を償うため、もっと我々を支援してほしい。」と言うだろう。

(3)ウクライナ危機 で、米国はロシアに制裁しているかもしれないが、米国が大困窮に追い込まれるかもしれない。
ロシアをドルから排除したことで、決済をドルに依存するのは危険だと、
・サウジは中国との原油取引をドルでなく元で行うことを検討し始めた。
・ロシアが主導するユーラシア経済連合と中国が、単一通貨の導入を検討し始めた。
・欧州は、結局、ロシア(資源)、中国(貿易相手)が必要だ。
・アフリカは、もう中国に半ば支配されている。
インド、ロシアとの取引でルピーやルーブルでの決済を検討-関係者 - Bloomberg

ドルがなくてもいい世界ができたら、大経常赤字国の米国のファイナンスは難しくなる。
米国大困窮。ウクライナ危機は世界を変えるかもしれない。
そうなると、台湾は勿論、日本も中国に飲み込まれるかもしれない。
バイデン大統領はわかっているのだろうか?岸田首相はわかっているのだろうか?
私は心配でならない。







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首相「展開次第で戦後最大の危機」 ウクライナ侵攻巡り: 日本経済新聞

首相の考えていることと、私小考えていることは違うかもしれないが、・・・



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