Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

2021年03月

新規失業保険請求件数から推計した3月の非農業部門雇用者前月比増加数は+622千人。

新規失業保険申請件数(4週移動平均の1か月前比)と非農業部門雇用者数前月比増減の関係について、
前者は週次データ、後者は月次データ(但し、集計のタイミングは12日を含む週)だが、これまで使っていたグラフは微妙に両者のタイミングがずれてきたので、今回はファインチューニングした。
チューニング後のグラフは次の通り。
20210331a

上図から、3月の非農業部門雇用者前月比増加数は+622千人。

過去の予想と結果
20210331b
これを見ると、全く当たっていないのがよくわかる。以前はこんなに外れなかったのに?
covid-19パンデミック以降、おかしくなった。
ただ、傾向は外れていないので、今回のチューニングで改善することを祈る。

次も参考にしてください。
米 雇用統計と政策金利 : Kecofinの投資情報


GPIF悩ます中国国債、高リターンも政治リスク-指数組み入れへ - Bloomberg
FTSEラッセルは10月から、世界的な債券ベンチマークの世界国債インデックス(WGBI)に中国国債を段階的に組み入れる予定。
日中関係の緊張を踏まえると、国内の年金資金を中国国債に投資することはGPIFにとって政治的に理解を得がたい選択となる公算が大きい。
詳細は上記リンク先で


中国がFTSE RusselにWGBIに入れるよう圧力をかけたのだろう。ここでも中国が世界覇権のため徐々に準備を進めていることが感じられる。しかし、それに対して、運用利回り向上のためという名目で、結局日本は何も抵抗できないだろう。もう、中国無しでは何も成り立たなくなっている。

GPIFは大麻関連株に投資していることも話題になっていた。
海外の大麻関連株に投資のGPIF-公的資金運用に難しさも - Bloomberg

公的な資金の運用は難儀なことだ。

この件に関しては、新事実が次々に出てくるので、まだまだ状況は変化するかもしれない。
しかし、市場は、パウエル議長を信じている。仮に一時的な株価調整があるにしても(ないと思うが)、大きな問題にはならないだろう。
とはいえ、私がしつこくメモしているのは、現在、margin debtが大きくなっており、しかも、CFDやトタルリターンスワップなど利用の投資も含めると、相当な投資資金の債務があるのではと危惧しているからである。万一のことが起きた時(万一なので、ないとは思っている)、その時振り返るためにメモしている。


アルケゴスに群がった金融機関 米当局・議会監視強める: 日本経済新聞

アーケゴス問題で世界の銀行損失100億ドルも、Wファーゴ「影響なし」 | ロイター
ウェルズ・ファーゴやゴールドマンザックス、モルガンスタンレーなどは損失を出さなかったようだ。十分な担保があったようなことを言っている。ドイツ銀行はプライムブローカー業務から手を引こうとしていたので被害が小さかったのだろう。クレディスイスと野村に問題があったのか?どうして三菱証券UFJ証券欧州が引っかかったのか?
三菱UFJ証:米顧客取引で約2.7億ドル損害、ポジション処理完了 - Bloomberg
三菱UFJホールディングス 損害に関するお知らせ(pdfファイル)

UBSもアルケゴス取引から無傷ではない-報道 - Bloomberg

ドイツ銀、素早い売却でアルケゴスショックの難逃れる-関係者 - Bloomberg

ポイント
(1)個人のファンドである。従って、年金など顧客はいない。自分の金を自分で運用して損しただけの話。
(2)それだけならいいが、ヘッジファンドが損を自己資金だけでカバーできなかったので、損を被った機関がある。その個人ファンドに、取引の執行・決済や資金調達などのサービスを提供していた野村やクレディスイス傘下のプライムブローカーである。
これが金融システムに影響するかと多少は話題になったが、その懸念は市場では全くなされていないし、実際のその懸念はないようだ。
そもそも、今回の最大の問題は、レバレッジ投機である。アルケゴスの資金(つまりフアン氏の資産)が100億ドル、この資金で500億ドルあるいは1000億ドルの総ポジションを取っていたとの見方もあるようだ。
仕組みはトータルリターンスワップの利用だ。アルケゴスはプライムブローカーに例えば、10億ドルの資金を預けトータルリターンスワップ契約で50億ドルの株を間接保有する。
プライムブローカーは表面的に自分の投資として50億ドルの株を買い、そこから得られるトータルリターン(売却損益や配当収益)をアルケゴスに渡すとともに、50億ドルの金利を支払ってもらう。つまり、トータルリターンと金利のスワップだ。トータルリターンがマイナスになれば、預かっていた10億ドルの資金からマイナス分を払ってもらう。プライムブローカーにはリスクのない取引のはずだ。ところが、今回は、そのマイナス分を補填するのに預かっていた資金では足りなくなった。そこで、プライムブローカーは追加の資金(追証)を入れてもらうように要請したが、アルケゴスはそれができなく、預かっていた資金で足りなくなった分がプライムブローカーの損失となったということだ。
結局今回の問題は、レバレッジが大きすぎた。どれだけのレバレッジを取っていたか不明だが、10億ドルで50億ドルの株を買えば(5倍のレバレッジ)、わずか20%の株価下落で元手が吹っ飛ぶ。一般の信用買いではこれは最大2倍だ。そして、金額が大きすぎた。そして、ファミリーオフィス(同族資産で、広く集められた資金でない)で当局への届け出や情報公開の必要がないということだ。
ということで、問題は、アルケゴスとプライムブローカーだけの話なのであるが、以下(3)以降へ。

(3)ファンドの清算で、大規模な売りが出て、一部の株価が大きく下落した。しかし、そもそも、それまで、そのファンドに買い上げられて株価は大きく上昇していた。だとしても、株価下落の影響を受けた投資家はいるだろう。
(4)このヘッジファンドの資金が株式市場からなくなるので、小さいながらも、市場に影響はあるだろう。
(5)これを機に、margin debtがITバブルやサブプライムバブル時のように膨れ上がっているが、それが巻き戻される可能性がある。
(6)margin debtの統計データはあるが、今回の件ではCFDが利用されていたようだ。つまり、統計でわかる規模以上にレバレッジを効かせた買いがあるということだ。逆回転した時は怖い。
(7)今回の件、GameStopショックと、ヘッジファンドやプライムブローカーに規制がかかる可能性がある。但し、それは株式市場に影響はないだろう。
コラム:アーケゴス問題、ヘッジファンド規制強化待ったなしか | ロイター
(8)今回の事件の始まりは、marigin callの発生。つまり、株価の大幅下落であるが、株価の下落は予期せぬことで起こりえる。今回は、予期せぬこととは言えない事態で始まった。
バイアコムCBSの株価は買い上げられていた。バイアコムCBSはストリーミングでNetflixなどに後れを取っており焦っていた。そこでストリーミング戦略のための資金調達のための増資を発表した。しかし、増資は株のダイリューションになるので、それでなくても割高だった株価は大きく下げた。
バイアコムCBS株、最高値から55%下落-ブロック取引が追い打ち - Bloomberg
米・テレビ業界は、なぜストリーミング移行に苦戦するか?:バイアコムCBSの場合 | DIGIDAY[日本版]


話は全く変わるが、「謎の日本株の買い手」が気になっているが、日経225レバレッジファンドなどによる先物買い、私募・公募投信の設定が相次いでいるか、などかなぁ?と思っているが、ひょっとしてCFD、トータルリターンスワップなどによる日本株買い(買い手は日本の金融機関か?)かもしれないなぁと、今回の件を見て思い始めた。

これも関係あるのだろうか?
三菱UFJ証、損害の恐れ 米顧客に起因、330億円 - 芸能社会 - SANSPO.COM(サンスポ)



アルケゴス・ショックで野村やクレディスイスが巨額の損害を被ったようだ。しかし、金価格を見ると、全くブレていない。金融不安は全くないようだ。
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Archegos Capital Management(以下、アルケゴス)がレバレッジを効かせて200億ドル相当の株を間接保有、株価下落に伴い追証求められるも対応できず、間接保有株の強制売却、資金提供していた投資銀行(野村ホールディングス、クレディスイスグループなど)が多額の金融損失を被った件について、

ここにまとめられている。まだ全容(特に金額規模)はわからないが、起きたことは概ねわかる。
アルケゴスの巨額投げ売り、盲点だった「個人」投資会社: 日本経済新聞

焦点:アルケゴス問題で分かった監視の穴、米当局は規制強化へ - ロイターニュース

クレディSが目指したアルケゴス混乱回避策、各行の合意なく事態悪化 - Bloomberg

韓国系ファミリーオフィス「アルケゴス」の巨額投げ売り、ウォール街を揺るがす : hankyoreh

(1)レバレッジの方法は、信用買いではなく、CFD(差金決済取引)のようだ。
詳細はわからないが、アルケゴスが野村などに証拠金を置き、野村が株を保有する。株価が上昇すれば証拠金が増え、株価が下落すれば証拠金は減少する。野村などは株は保有するが、株価変動に伴う損益は顧客拠出の証拠金で調整する。それだけのことなので、野村にとってはリスクのない取引のはずだった。しかし、株価が大きく下落すると、証拠金はマイナスになるため、追加の証拠金が必要になるが、アルケゴスはこれを入れられなかった。なので、この取引は強制的に解除され、株も強制的に処分されることになった。そして、株を保有していた野村やクレディスイスに多額の損失が発生することになった。
CFD(差金決済取引)は為替のFXと同じ仕組みだ。この方法だと、かなり(例えば5倍)のレバレッジを効かせられる。

なお、CFDとしたが、実際の形態はトータルリターンスワップだ。野村がアルケゴスのために保有する株から得られるトータルリターン(売買損益や配当収入)をアルケゴスに渡し、その代わりにその株を買うのに必要とした資金の何%(通常は一般的な市場利息程度)かをアルケゴスから受け取るということ。トータルリターンがマイナスになれば、野村はアルケゴスからそのマイナス分を受け取ることになるが、今回、アルケゴスは、それを支払えなかったということだ。
アルケゴスのフアン氏がひそかに積み上げた巨額資産、数日で消失 - Bloomberg
アルケゴスショックの背後に「CFD」-秘密裏にポジション積み上げ - Bloomberg
アングル:アーケゴス問題、全容把握に不安残る 規制当局も注視 | ロイター
アーケゴスの資産は約100億ドルだったが、500億ドル以上のポジションを保有していたという。
情報BOX:アーケゴス問題、背後に緩い「ファミリーオフィス」規制 | ロイター
焦点:アーケゴス問題、過剰なリスクテイク象徴 投資家の熱気冷めず | ロイター

アルケゴスショックの背後に「CFD」-秘密裏にポジション積み上げ - Bloomberg
クレディSと野村、多額の「損害」も-アルケゴスのポジション (訂正) - Bloomberg
野村HDが米で2200億円規模の損害も、巨額ブロック取引と関連か - Bloomberg
ドイツ銀がアルケゴスでリスク、遅過ぎたヘッジファンド向け事業撤退 - Bloomberg
野村とクレディ、巨額損失懸念 欧米金融に拡大も: 日本経済新聞
野村とCSが多額損失の可能性、アーケゴスがデフォルトと関係筋 | ロイター

(2)しかし、金融不安は起きていない。全くの懸念もないようだ。
野村やクレディ・スイスは巨額の損害を被る可能性を明らかにした。
今回の件で、ゲームストップ株事件に続きヘッジファンドの在り方が再度問題になろう。
アルケゴスのポジションの総額は500億ドルを超えている可能性があり(上記では200億ドル相当の株を間接保有とした。要は正確なポジションはわからない)、まだ全て清算はされていない模様だ(モルスタはほぼ終了したようだが)。しかし、市場には金融不安は全くない。金価格を見ればわかる。

金価格とインフレ連動債との相関は、昨年11月20~25日頃新しい関係に変わった。
トランプ前大統領が実質的にバイデン勝利を認めた時だ。大統領がトランプからバイデンに変わって金価格とインフレ連動債との相関も変わったということ。
金価格は、その相関に沿った水準にあり、全くブレていない。
つまり、金融不安リスクはないということだ。(あれば、その分金価格は高くなる)
20210330a
20210330b

(3)というわけで、今回の件で強気相場は崩れないだろう。ただし、急増しているmargin debt(証拠金債務)に注目が集まり、相場がもたつく可能性はあろう。
次は、ヤルデニ氏のサイトからの借り物だが、margin debtの前年同月比増加率が高い。ITバブルやサブプライムバブル時以来だ。
これについては、今回はこれ以上は論じない。
20210330c








米メディア株、投げ売りで急落 投資会社が苦境か: 日本経済新聞
レバレッジ解消は続くか 米ファンド問題「慢心」へ警告: 日本経済新聞
野村株急落 米巨額「追い証ショック」波及か 日経QUICKニュース(NQN)

米株市場における史上最大のマージンデットが直面する最大の危機とは
気にしていなかったが、
ゴールドマンの大量ブロック取引、フアン氏扱い巡る方針転換が発端か
株式ブロック取引、タイガー出身フアン氏のオフィスが背後に-関係者

このブロック取引のカウンターパーティーは誰?
そんな投資家がいるのか?

気にしていなかったのは、今のmargin debt の 株価比率が、00年の株価バブルや07年の不動産バブル時のような突出した状態になっていないからだ。
しかし、margin debt の前年比増加率は凄まじく、調整がおきれば怖いかも?

次のサイト(pdf)のグラフを参照してください。
Stock Market Indicators: Margin Debt yardeni

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タイガー・カブのビル・ホワンが運営するArchegos Capital Managementの保有株の整理により、ViacomCBS (NASDAQ:VIAC)やDiscovery Inc. (NASDAQ:DISCA)の株が大きく売られた。

ゴールドマン・サックスがVIAC株を3000万株以上、モルガン・スタンレーが1500万株以上のブロックをオファーしたことで売りが始まった。

ハイテク、メディア、テレコム企業にフォーカスしていたArchegosの清算は、投資銀行から受けたマージンコールの証拠金不足からきているのでは思われている。
Archegos Capitalのウェブサイトは現在機能していない。
cf. Archegos Capital Management, LP | LinkedIn

また、ゴールドマンを通じて、中国のハイテク株であるBaidu (NASDAQ:BIDU)、Tencent Music (NYSE:TME)、Vipshop (NYSE:VIPS)も大規模なブロックがオファーされたようだ。

TencentMusicが10億ドルの自社株買い計画を発表

また、GSX Techedu (NYSE:GSX)、FarFetch (NYSE:FTCH)、Iqiyi (NASDAQ:IQ)、FuboTV (NYSE:FUBO) などのいくつかの銘柄でも、大規模なブロックトレードが行われた。

ブロック取引に巻き込まれた中国GSX、創業者が一晩で3400億円失う - Bloomberg

Large block trades tied to Archegos raise worries about trading this week | ロイター

次の図式か?
先週初めViacomCBS増資発表⇒希薄化による株価下落⇒margin call発生⇒Archegos他に打撃 ポジションの解消を余儀なくされた

<参考>
マージンデット|FXのノウハウ
マージン・デット(証拠金債務)はバブル崩壊の指標になるか | 配当再投資でのんびり投資
マージンデットは6ヶ月前年割れが続く - ユキマツの「長期投資のタイミング」
米国のマージンデット、史上最高額を大きく更新 ~2017.11月データ~ - ユキマツの「長期投資のタイミング」






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