Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

2020年11月

参照 為替相場決定要因の変化?

各国の金利に差がなくなってくると、為替相場の決定要因として実需(貿易収支や所得収支、直接投資収支など)が重要になってきている。

トランプ政権では、生産の国内回帰*を目指し、貿易収支を改善することが目標だった。狙われたのは、中国、日本、ドイツ、メキシコなどだった。
中国には、高い関税を課し、巨額の輸入を約束させるなど、それなりに手を打った。結果、米国の対中貿易赤字は縮小した。しかし、しかしである、その分がベトナムや台湾などに移っただけになった。そして、多くの国の貿易収支が改善することになった。
参照 米国の対外貿易赤字国

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そうなると、為替相場の決定要因が資本移動から実需に移っている中で、そういう国の通貨は堅調になった。逆に言うと、ドルが弱くなった。
例えば、ニュージーランドの貿易収支は大きく改善している。
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なお、中国の対米貿易赤字が悪化したから中国の経常収支が悪化したかというと、そうはならなかったのは前回のブログのとおりである。
日本も基礎収支がしっかりしている

なかなかドル高に向かうのは難しそうだ。
注目は、各国の 貿易収支、経常収支、基礎収支の推移。

しかし、これが結構難しい。
積極的にデータを取りにいかないと、自動的には入ってこない。
日本の基礎収支はどこで見られるのか? 中国の経常収支はどこで分かるのか?
豪州の貿易収支や経常収支はどこで見られるのか?
ユーロ圏の貿易収支でさえ難しい。
ニュージーランドは? ブラジルは? インドは? 
取引先の証券会社やFX会社がサービスを提供してくれればと思う。

私は発表サイトでデータを入手しているが、大変だ。データベンダー(BloombergやDatastream、Factset、CEIC、Haver Analytics、Trading Economics 、他にもいろいろある)を利用していれば、初回のセッティングは大変だが、1回セットすれば次回からは自動的にデータ更新される。

中国の野望はわかっているが、中国がどういう政策をとっているのか全てはわからない。
参照 トランプ大統領 文在寅大統領 習近平国家主席 安倍首相

経常黒字で得た資金を対外直接投資、新興国経済支援に使い、海外への影響力を高める政策をとっていることは間違いないだろう。
経常黒字のために貿易収支の黒字ばかりが伸びるのは好ましくないかもしれない。ホンネは輸入は増えても、中国への輸出代金を元で受け取ってもらいたいだろう。そして、中国からの輸出代金をその元で払ってもらいたいだろう。

旅行支出の拡大は望まないだろう。旅行の場合、どうしても相手国の通貨を買うことになるからだ。
旅行収支の赤字拡大で、中国の経常黒字は縮小しつつあった。
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なお、サービス収支のほとんどは旅行収支である。
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この不都合を、新型コロナ感染拡大で、一発で逆転した。中国の海外旅行が止まってしまったのだ。
そうして、経常収支は大きく改善した。
原油価格の下落もあって貿易収支も大きく改善したが、これは長くは続かないだろう。しかし、それでいいのだろう。貿易収支ばかり拡大すると、摩擦が起きる。
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新型コロナ感染拡大は中国経済を復活させた感がある。
狙ってやったのならすごいが、さすがにそれはないだろう。
それよりも、何もかも中国に都合よく世界が回っているように思う。
やはり、全てを共産党がコントロールしているところが強みだろう。
勿論、一党独裁だからうまくいくということではない。
策略に長けているということだろう。



先週金曜日、実質金利は低下し、ドルは下落した。本来なら金価格は上昇するはずだが、あにはからんや大きく下落した。何が起きたのか?
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お先が暗い時(不安のある時)”金”は輝く(金価格は強含む)。
お先が明るくなった時(不安がなくなったとき*)金は輝きを無くす(金価格は弱含む)。
 *インフレ懸念がなく、金融システム不安もなく、倒産ラッシュなど経済不安もない。

金は輝きを無くしたようだ。つまり、お先が明るくなったということだ。
VIX指数も低下している。
世界最大の金ETFであるSPDRゴールド・シェア・ファンドの金保有残高も減少している。投資家が保有を減らし始めている。
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金が輝かなくなった時、リスク資産は線香花火のちり菊のようになる。菊の花びらが咲いては散り咲いては散って、線香花火が最も美しい時だ。そして、物語の終焉だ。しかし、ここからが長くいつまでも余韻を残して漂う。  (参照 米国株価上昇の背景 いつ、相場から降りるべきか

しかし、コロナが蔓延し、世界の多くの国でロックダウンや厳しい規制措置の導入に動いているのに、どうしてこんなに楽観的になれるのか? ワクチン開発のニュースが安心感をもたらしているのか。

一つはっきりしていることは、それでも世界経済は中国にけん引されて拡大しているということだ。銅価格は強く、原油価格も堅調だ。中国はパンデミックともおさらばしたようだし・・・。今や世界は中国中心に回っている。
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〔需給情報〕11月第3週、海外投資家が日本株を5971億円買い越し=現物先物合計 | ロイター

投資部門別取引状況 特段注意すべきことはないが、チョット気づいた点。
(1)個人、投信 等が売り越し。ドコモ絡みの売りと見ている。公開買付期間内に応じなかった人も、(期間後に)強制買取を待たず市場で売っていると思う。

<明日には変わるが、20/11/27の売買代金トップNTTドコモで、売買代金は2,760億円だ。今でも、取引はなされている。>

だとすると、この売りは最終的にNTTが吸い上げてくれるので需給上は悪くない。むしろ、個人等が売った資金が市場に還流してくるので相場には大きくプラスだ。

(2)信託が売っている。果たしてGPIFの売りなのか? 私は、これもドコモ絡みだと思っている。 GPIFは本当に売っているのか? GPIFが公表した7-9月のデータからは売っているのは確かなようなのだが?、イマイチ納得がいかない。まぁ、しかし、いずれにしろ、それほど気にする必要はないだろう。
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(3)海外投資家の先物買いなのだが、11月第3週は日経225先物の買い越し額はほぼゼロ、TOPIX先物を2,619億円買っている。ないことはないが、珍しい現象。理由は不明だが、(A)投機筋がTOPIXの方が日経平均より魅力的だと考えている(要はNT倍率が高すぎると考えている)か、(B)海外投機筋は日本株に対して強気ではないが、年金など長期投資家がTOPIX先物を買っている。 ということが考えられる。 まぁ、あまり詮索しないでおこう。何かの事情という気がする。
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(4)海外投資家の日本株売買状況データが、財務省集計データと東証集計データで大きく違う。
財務省集計データでは、海外投資家が日本株を大きく売り越している。思うに、これは海外投資家が取引所を通さずドコモを処分したのだろう。そのままNTTに吸収されるので、必ずしも、日本株売り圧力にはならない。とにかく、このところドコモ絡みの売買が惑わせる。何と言っても4兆円だから。
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なぜなら、法定通貨に対する理論価値が出せないからである。

全ての金融資産の価値は基本的にDCF法がベースになる。
(株の場合)配当割引モデルや(不動産の場合)収益還元法ともいわれる。

要は、金融資産の理論価値は、その資産が将来生み出すキャッシュ・フローの現在価値となる。
銅のようなコモディティーの場合は、将来生み出すキャッシュ・フローがないが、経済的価値(電線に使ったりする)があり、価格は需給で決まる。理論価値の算出は難しいが、需要は経済成長でおおまかに把握できる。
金は特殊。希少で、均質性を持ち、自由に分割できて、変質せず、耐久性がある(鉄のようにさびたりしない)という性質があり、こうした特長を持つものは他にほとんど存在せず、それが故に通貨的価値を有するからだ。これ以上は省略。

では、ビットコイン固有の価値はなにか? 投機の対象くらいしか特に思いつかない。
それでも送金手段に使われるし、金利もつくように整備されてきてはいる。問題はまだまだ安定的な固有の特徴が見えないことだ。

結論である。
仮想通貨には本源的価値がないが、ないがゆえに自由に価格が付いている。
つまり、価格が高すぎる・安すぎるという基準がない。
また、相続性も怪しい。ビットコインの保有者が死んだとき、相続人はそれを手に入れられるのだろうか?
そういうものを、遊び以外で保有する意味がわからない。少なくとも私には。

最後に、ビットコインを否定はしない。徐々に整備されてきているようであり、とにかく、一般的になってきている。まだ続いているのは何らかの価値があるのだろう。そうでなければ、これだけ監視がなされている中では、不良なものであればとっくに消えているはずだ。ただ、その価値が麻薬的なものでないことを祈る。





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