Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

2020年09月

機関投資家(生保や年金)はアセットアロケーションに苦労するだろう。
とにかく魅力的な債券市場がないのだ。
もはや利回 り 革命 な ど と い う も の で は な い 。債券に 投資 す る 意味 は 投資 で は な く 、 ポート の 流動性確保 、 ポート の ボラ ティリティ ー 抑制 で し か な い 。

株価は企業業績に比べて異常に高い。しかし、いやでも株に資金を振り向けるしかない状態だ。
結局、これが株高を支えているのだろう。
FRBのスタンスからすれば、こういう状態は長く続くだろう。日本はいうまでもなく、欧州だって同様だ。
「株は高すぎる」と言っていては、市場に取り残されるだけだろう。

私がそうだ。
1987年を思い出す。春ごろから株高はおかしいと思い始めて「今に調整が来る」と叫んでいた。しかし、3か月たっても4カ月たっても、一向に調整は来ない。もう叫べなくなった。そして、8月頃、逆に株は割高でないという理屈をこね始めた。そして、1987年10月19日がきた。
こんなトラウマは余計だった。
ちなみに、私はロンドンにいたが、当時バカ上がりしていたのが、胃潰瘍薬ザンタックを開発したグラクソや世界で初めて抗HIV薬(レトロビル)を開発したウェルカムだ。化学のICIも大きく上昇していた。凄まじい上昇だった。今でいうと、GAFAMかな? なお、グラクソはその後、ウェルカムと合併した。
グラクソで思い出した。10月19日の前だったか後だったか忘れたが、決算発表で前年比25%の増益を発表したら、株価は暴落。その後の説明会でCEOは、「いつまでも前年比50%の利益成長が続くと思うほうがおかしい。」と、暗に「自分のマネージメントに問題はない。」と主張した。印象的だった。

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NTTによるドコモ株式公開買付代金は約4兆2,545億円。買付期間は20年9月30日~11月16日。公開買付資金は銀行借入などで、株式の発行はない。つまり、4兆円がまるまる市場に入ってくる。これはすごい。

最近の四半期別投資部門別株式需給は次を参照ください。
4兆円はとんでもない額だ。
2020年09月20日 部門別日本株需給・保有残高

株式需給においては非常にインパクトがある。どういう相場展開になるか楽しみだ。
但し、事後的な需給は一致する。買い手があれば、それを売る人が必ずいるからだ。今回は、
(1)ドコモの売り手は、現金を多少手元に残すかもしれない。
(2)市場が大きく上昇すれば、個人の逆張り(利食い、売り)が出るだろう。
(3)市場が大きく上げれば、年金のリバランス売りもでるだろう。
(4)その他、事法の持ち合い解消売り、銀行・保険の株式保有縮小売りもでるかもしれない。
(5)需給上は中立になるが、市場が上がることを見越して信用買いした投資家の反対売りがでるという動きもあるかもしれない。
これらのなかで、(2)~(4)は売りが出る前に相場が上昇することが条件になる。

では、相場堅調となる可能性が高いのかというと、そうだと思うが、最もリスクが大きいのは米国の株式相場が崩れて、大きな外人の日本株売りがでることだ。外人が本気で日本株を売ってくれば、先物を合わせて週に1~2兆円の売りは簡単に出る。1か月もあれば4兆円程度の売りは出てくる。

最後に参考までに、年度別投資部門別株式需給は、
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私の相場予想は、新型コロナウィルス感染拡大に対する景気対策(FRBの緊急の資金供給制度、米CARES法など)までは当たっていたが、以降は、丸外しだ。ことごとく外れる。ホント滅入る。

今日、ユーロが急反騰したのも、全く考えていなかった。
市場のポジション調整としか思えない。

(1)ユーロ高、金高の背景は、米国の実質金利低下(期待インフレ率上昇)。
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(A)米国の実質金利低下(期待インフレ率上昇)は予想外のことだ。
債券(普通国債)利回りはやや低下したが、明確な理由は不明。
期待インフレ率が上昇したが、原油価格が低下する中でのことであり、やはり明確な理由は不明。

今日の経済統計は次の通り。国債利回り低下を起こすようなものではないが・・・?
米国の商品貿易赤字は8月に3.5%増加
7月のケースシラー住宅価格指数は前年同期比4.8%上昇
  S&P/ケース・シラー・全米住宅価格指数 - S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
消費者信頼感指数が8月の86.3から9月は101.8に上昇

(B) ドイツ10年債利回りは7週間ぶりの水準に低下したが、ユーロ為替相場への影響はなかったようだ。
ドイツ債利回りの低下の理由は、独消費者物価指数(9月)がEU基準(HICP)で前年比0.4%低下したこと。新型コロナウイルス感染拡大を受けた景気対策の一環として政府が実施した付加価値税率(VAT)の引き下げのほか、エネルギー価格の低下が押し下げ要因となった。

(2)株価は不安定な動き
いつもながらの背景。つまり、ウイルスの懸念と政治的不確実性。
選挙動向、コロナウイルス救済パッケージの動向、最高裁判所判事候補者バレット氏をめぐる動きなど多くの不透明材料がある。


<メモ>
ユーロ圏景況感指数(Eurozone Economic Sentiment Indicator)は9月に上昇、5カ月連続改善もペースは緩やかに
Eurozone Business and Consumer Survey
Euro Area Economic Sentiment Indicator
Latest business and consumer surveys | European Commission

10月2日(金)発表予定の米9月非農業部門雇用者数前月比増加数予想=
+1,500千人

新規失業保険申請件数のデータから予想した。
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上と同じ。左右のスケールを変えただけ。
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次は、これまでの予想と結果。
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例によって、シカゴ投機筋のユーロ/ドルの(ネット)ポジションを見てみる。
とにかく、投機筋のユーロのポジションは過去最大レベルになっている。
米国の異例の金融緩和を受けてのことだ。
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しかし、その金融緩和は、一段落した感がある。行き詰まり感もある。
そうなると、こんなロングポジションは維持されるのか?という問題が起きる。

ポジションをロングとショートを分けてみると、
ショートポジションは歴史的にはまだ低下余地があるにしても、ほぼボトムだろう。つまり、ここからはユーロの売り余地は小さい。
一方、ロングは、過去最大レベルからここにきて反落の兆しがある。
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ユーロドル相場を投機筋のポジションからだけで考えれば、ここからはユーロ売り/ドル買いということになる。
勿論、ありえないと思うが、ここからユーロ圏経済が強きなり、金利も上がるようなことがあれば、投機筋のユーロロングポジションはさらに拡大する可能性もある。

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