Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

2020年07月

7月15日(水) 
6月の米鉱工業生産指数は前年同月日▲10.8%。
これは、実質GDP前年同期比▲2%程度に相当する。
実体経済は、依然、回復は鈍い。
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一方、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数は17.2。3カ月連続で上昇した。
これは、ISM指数58程度に相当する。実質GDP前年同期比増加率だと3.5%以上に相当する。
企業の景況感はかなりいい。
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足許の企業業績はよくはなっていないようだが、景気のムードはいいようだ。
企業業績と景況感にギャップが生じているが、株式相場は、景況感(ソフトデータ)を反映しているようだ。
債券相場は現実の景気実績データ(ハードデータ)を反映しているようだ。

ここ10 年の日本株のパフォーマンスだが、米国には見劣りするもの、北米を除く他の先進国とはそん色ない。一時もてはやされた新興国だが、中国を除くと冴えない状況だ。続きを読む

日本の貿易収支は、新コロの影響で、輸送機器や機械などの輸出が落ち込む一方、食料品の輸入などは落ち込まなかったことから、赤字になっている。
しかし、日本の経常収支は、やはり、対外資産からくる収益(直接投資収益、証券投資収益)が大きく、赤字にはなりにくい。
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中国パワーの源泉は金(カネ)である。
対米貿易黒字で稼いだ金で、各国からの輸入を増やし、アフリカなどの新興国やフィジーなどに金を貸したり、インフラ投資をして影響力を高めたのである。
オーストラリアなどは狙い撃ちにされた感がある。
対中輸出を増やして景気を支えている国は中国無しでは立ちいかなくなっている感もある。

米国の貿易統計を見るとよくわかる。中国に大きな資金を提供している。
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昨年から米国の対中貿易赤字は減少しつつあるが、依然極めて大きく、毎月、米国から中国にそれだけの資金が流れていっている。米国の対中貿易収支が黒字にならなければ、米国は中国に資金を渡すことになる。

かつて、米国は日本との貿易赤字がGDP比1.2%になったことがある。このとき、米国は何をしたか。プラザ合意である。日本は急速に進行した円高で輸出が減少し、景気は低迷した。企業の海外移転も進んで、国内の空洞化が起きた。金利低下により不動産バブルが形成され、その後失われた30年になる。
しかし、米国の対中貿易赤字がそのレベル(1.2%)をはるかに超えても、米国は何の措置もとらなかった。
中国が米国で稼いだ資金で各国を牛耳り始め横暴を始め、ようやく米国は動き出した。
しかし、政府は動いても、米国企業(特に多国籍企業)の動きは鈍い。中国が企業の行動に組み込まれているからだし、大きな消費市場であるからだ。中国はそのことを知っている。
中国パワーは大きくなるばかりだ。
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株価が企業収益と連動するなら、今の株価は大きく下落していいはずだ。
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ストラテジストにとって最も重要な経済指標の一つはISM製造業景況感指数だ。
ISM製造業景況感指数は企業収益と連動しているからである。
ISM製造業景況感指数が概ね50.5を超えると、企業収益は増加する傾向がある。下回ると減益だ。
なので、(ISM製造業景況感指数-50.5)を累積していくと企業収益動向と連動する傾向が見られる。
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これからすると、ISM製造業景況感指数は大きく落ち込むはずだ。
しかし、そうはなっていない。6月のデータに至っては、52.6になった。こういうデータが続くと(ISM製造業景況感指数-50.5)の累積はどんどん右肩上がりになっていく。

どうやら、株式相場は景況感の方を反映しやすいようだ。
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となると、今後の株価の動向は、ISM製造業景況感指数を注目することとなる。

ISM製造業景況感指数の先行指数には、いくつかある。ニューヨーク連銀製造業景気指数やフィラデルフィア連銀製造業景況指数などである。こうした指数に注意していきたい。

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