Kecofinの投資情報

市場歴約40年の元証券投資ストラテジスト・ファンドマネージャーが、経済、市況分析情報を提供します。

2020年06月

投資家は、年金やソブリンウェルスファンドなどのlong onlyの長期投資ファンドと、ヘッジファンド、CTAなどの短期の投機筋に分かれる。

日本株で相場を決める最大の投資部門は海外投資家である。
海外投資家のうち、短期の投機筋は主に先物を利用する。
そのフローの動向は、東証が発表する投資部門別取引状況でわかる。
但し、ポジション(残高)は発表されない。
なので、説明は省略するが代替指標として裁定取引残をみる。

一方、米国では、CFTC(全米先物取引委員会)が、各取引所に建て玉の公表を義務付けている。
参加者の分類は2種類あるが、非商業部門(いわゆる投機筋)と商業部門などの分類が古くからあり、投機筋のポジションがわかる。
この中で株式について注目されるのが、E-MINI S&P 500 STOCK INDEXの先物ポジションだ。レギュラーのS&P500より圧倒的に出来高が多い。

以上が、前置き。
最近の注目は、いわゆる投機筋であるヘッジファンドが、米国株に対するショートポジションの解消を急いでいることだ。新コロショックで、ショートを積み上げてきたが、相場は逆に上昇を続け締め上げられ気味だが、とうとうポジションの手じまいを急ぎ始めたようだ。

S&P500のEミニ先物の投機筋のポジションのグラフが次である、直近週で急速に買い戻し、ショートポジションを圧縮している。週間の圧縮幅は2007年以来で最大。圧縮前は、ショートポジションは差し引きで約10年ぶりの高水準に達していた。
20200630p

実は、米国の投機筋は、先物だけでなく、S&P500ETFの空売りも行っている。short interestという。ここ数年はこちらの方がメインかもしれない。
残念ながら、私はデータを持っていないが、Bloombergニュースによれば、『SPDR・S&P500ETFの空売り比率は6月26日に4.9%と、5月末の6.7%から低下し、ショートカバーの動きを示していた。』とのこと。こちらもショートの圧縮を図っているようだ。

こうした動きから相場予想ができればいいのだが、難しそうだ。
ただ、ショートポジションが大きければ、潜在的な買戻し需要があるが、ショートポジションがなくなってくれば、そうした需要は低下する。
一応、強気材料がひとつ消えつつあると言っておこう。

今の株式市場を支えているのは、FEDの「超金融緩和政策」と「信用力の低い企業への資金繰り支援」.。
(1)この政策の下で、経済が回復に向かっていると、株価は堅調になる。
心配なのは、
(2)Fedの超金融緩和があっても、新コロ第2波でeconomic collapseが起きる場合。。
(3)当分は心配なさそうだが、経済が強い回復を示して、Fedの金融政策が超緩和から正常化へ転換しても株式相場に影響が出るかもしれない。

Bloombergやロイターニュースによると、
6月29日の米国株式市場は上昇した。全米不動産業者協会(全米リアルター協会、NAR)が発表した5月の中古住宅販売成約指数が、前月比44.3%上昇して99.6と、統計を開始した2001年以来の大幅上昇となり、住宅市場が持ち直し始めていることを示唆したからである。
20200630a
背景は、新コロ対策の活動制限で春の住宅販売シーズンは中断していたが、住宅ローン金利が過去最低に下げ、一部の州でのロックダウン(都市封鎖)解除が追い風となったこと。

但し、新コロ感染拡大を抑えるための封鎖措置により経済がほぼ停止状態となった前の2月に付けた111.4は下回っており、また、前年同期(105)と比べても低く、Fedが超金融緩和を正常化に戻すような状態になるまでは至っていない。

問題は、依然新コロ感染拡大が続いている中で、住宅市場の回復が続くのかということである。

なお、この日、U.S. air-safety regulators resumed key flight tests of Boeing Co.‘s 737 Max, with the aim of returning the planes to service around the end of the year.  これを受けて、ボーイングの株は10%近く急騰し、市場のムードを盛り上げた。
原油価格の下落でシェールオイル関連企業が苦境に陥っている。Chesapeake Energy Corp.(CHK)は28日チャプター11を申請した。

私は、投資判断ではMACDを重視しています。
ただし、MACDはシグナルが出るのが遅れること、ダマシもあることなどから、ファンダメンタルズ分析と併用しています。そして、シグナルが出る前にアクションを取るようにしています。ファンダメンタルズ分析では相場の方向性も考えています。

そのMACDは、日米株、豪ドルとも6月中旬(11日~15日)頃に売りシグナルがでました。
米株や豪ドルは5月半ばにダマシがあったように、盲目的に信用はできませんが、ダマシが2回続くことは稀で、今回は下落相場が続いていると判断しています。勿論、相場ですから一直線に下落することはなく、上下動はあるでしょう。
20200629a
20200629b
20200629c
豪ドルはグローバル経済を反映することが多く、その意味で、株式相場を考えるうえでも参考にしています。
20200629d

これはTestです。続きを読む

日本株相場は、なが~い間(1994年頃から)海外投資家が支配してきた。海外投資家が買えば上がるし、売れば下がるというわけだ。
それが、4月の中旬から、海外投資家が売り越していても株価は上昇するようになった。
20200628v
20200628w
何が起きたかって?
やはり、日銀のETF買入上限引き上げが大きかったということだろう。
年間6億円では海外投資家に対抗できなかったが、12億円では御することができるようになったと考えてよいだろう。
部門別の需給動向を見ると、日銀のETF買いは海外投資家の売りをほぼ吸収していることがわかる。
20200628x
そういうことであれば、相場はどのように決まっていくのだろう。

日銀は海外投資家の売りには買い向かうが、海外投資家が買うときには様子見だ。
つまり、海外投資家が買うときは株価は上昇するだろう。
どういうとき海外投資家が日本株を買うのか?
(1)好循環による経済成長(バブル崩壊以降はない)
(2)金融緩和(異次元の金融緩和が有名)
(3)財政刺激(バブル崩壊後何度かある。今は財政的に難しい。)
(4)技術革新(めったにない。誰も持っていなかった携帯の普及時など)
(5)経済の構造改革・変化
    企業の海外進出は、国内経済が停滞していても、企業収益が伸びることもある。
    しかし、今のように世界経済が軟調になると、それもポジティブ要因にはな
    らない。
    また、大規模な規制緩和などが行われれば、経済構造が変わる可能性があるが、
    期待薄。実際には起きない。
(6)テクニカル要因(空売りを踏みあげられたときなど)
(7)その他(具体的には思いつかない)

では、海外投資家が買わないときは、海外投資家の売りは日銀が吸収してくれるので、その他の投資部門の動きで決まるだろう。

目先は自社株買いは難しいだろう。
20200628y
すると、年金や個人しか残らない。

年金や個人はどういう売買をするか?
基本的には、年金はリバランス、個人は逆張りだ。
これでは、相場は形成されない。

結局、需給で相場を予想するのは難しいということだ。
相場は需要と供給で決まるが、量ではない。需要と供給が折り合う価格ということだ。そして、事後的には需要と供給の量は一致する。当たり前だ。誰かが買えば誰かがそれを売っているのだから。
よく新聞に「個人が買っている」とかあるが、それは事実だが、その裏には必ずそれを売っている投資主体がある。それが海外投資家なら、記事は「海外投資家が売っている」ということでもいい。

最後に、では、需要と供給が折り合う価格とは?
それは長くなるので、今回は言及しないことにする。
しかし、一律の法則はないように思う。

最後の最後におまけ。
海外投資家の先物のポジションを反映する裁定取引残だが、現在異常なくらいのマイナスになっている。つまり、海外投資家のショートが記録的な水準になっているということで、これの買戻しが続くと思われる。海外投資家は、long onlyの長期投資家は現物を売ってくると思うが、ヘッジファンドなど短期の投機筋は先物のショートを買い戻す動きが中心になるだろう。
20200628z

↑このページのトップヘ