(1)値上げラッシュ update
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赤線が、4月にゼロに戻っているのは、携帯料金の値下げ効果がなくなったからだ。

家計消費を基礎的支出と選択的支出に分けて、それぞれの物価上昇率を見ると、
選択的支出の価格は上昇していないのに、基礎的支出の価格は大きく上昇している。
 基礎的支出(必需品的なもの)は、食料,家賃,光熱費,保健医療サービスなど。総支出の約60%。
 選択的支出(贅沢品的なもの)は、教育費,教養娯楽用耐久財(パソコンなど),月謝など。

ロシア・ウクライナ紛争でエネルギー価格、それに伴う物価上昇(輸送費、栽培コスト上昇など)、穀物価格などが高騰しており、生活必需品の価格は避けようがない。人々も値上げの理由が明確にわかっており、値上げを受け入れている。
しかし、決して物価上昇を受け入れたわけではなく、選択的支出に関しては、価格が上昇すれば買わないという態度を崩していない。
2014年の消費税増税の時は、基礎的支出に対しても、選択的支出に対しても、しようがないと受け入れた。

(2)実は、奇妙なことが日本経済に起きている。のupdate
家計の収入は、勤め先収入(世帯主収入,世帯主の配偶者の収入及び他の世帯員収入)、事業・内職収入、他の経常収入(社会保障給付など)、特別収入(10万円の現金給付など)。
ここで扱っているのは、「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」なので、勤め先収入が大部分である。
その家計の収入は、過去5年で1.133倍(年率2.53%増)になっている。
これには配偶者の収入増も貢献している。
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にもかかわらず、消費支出は同期間に1.010倍にしかなっていない。
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これまでは、経済成長⇒賃金(所得)増⇒消費増=経済成長⇒・・・・
という循環が目指されてきたが、賃金の増加は達成されている。しかし、賃金(所得)増⇒消費増 となっていないのだ。所得は増加しているにもかかわらず、消費が増えていない。
今の日本経済に必要なのはまずは消費(需要)だ。
成長無くして消費増はないというが、今は違う。

私が思うに、所得が高く所得弾力性の低い家計の所得が伸び、所得が低く消費性向が高く所得弾力性の高い家計の収入が伸びていないのではないか?
であれば、必要な政策は、高所得者から低所得者への再分配だ。

ところで、可処分所得から消費支出を引いた差額はどこへ回った?
預貯金は2016年頃まで12カ月で60~70万円程度の増加だったが、
今は、180万円近く増加している。
貯蓄は増加しているが、クレジット純減がマイナス=クレジットが増加している。これはどういう意味か?単に現金払いでなくクレジットの利用者が増えただけか?所得が足りなくて、クレジットに依存しているのか?
総収入ー総支出(預貯金なども含む)がマイナスで繰り越しになっているところを見ると、家計が苦しい世帯が増えているのではないか?(推測)
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いずれにしろ、所得が増えているのに、消費が減少していて、預貯金ばかりが増えているのは問題だろう。
政府はその預貯金を投資に回せといっているが、高所得者の預貯金が投資に回って、配当収入が増えても、それはまた預貯金になるだけ。国内消費は伸びず、日本経済の成長はない。

今は再分配政策こそが必要だ。
なお、アベノミクスの時は所得は減少傾向であったので、所得を伸ばす策が求められた。