政府は5月31日に「新しい資本主義」実行計画案「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」原案を公表した。
当初の分配重視はどこかに消え、成長戦略になった。

市場の見方
・変容した背景には日本経済の現実があるのではないか。経済の効率性を高め、生産性の向上を図らなければ分配の原資が確保できないだろう
・当初のイメージとは大きく変わった。前政権までの「成長戦略」にかなり近い着地となった。
「貯蓄から投資へ」に必要な処方箋は将来不安の削減と着実な成長、潜在成長率の底上げとデフレ脱却が正しい処方箋
・岸田政権の経済政策が所得再分配から成長重視へと軌道修正された。日本経済が抱える問題の本質は分配の不平等ではなく潜在力の低下にあるため、軌道修正は評価できる。経済政策は良い方向に転じてきていると考えられるが、財政拡張傾向が強まり財政規律がさらに低下してしまうリスクが大きな懸念材料として浮上。財政健全化へ再び政策を進めるべき時期に、ウクライナ問題を理由に拡張重視にかじを切ろうとする政府の姿勢は成長戦略の効果を損ねてしまう。
各施策は歳出歳入の一体改革を進め財源を確保して実施することが重要。いたずらに新規国債発行で賄えば成長戦略としての有効性を自ら損ねる。
・経済優先のトーンが強まり、財政再建目標の優先順位は低くなった。最大の特徴は、さまざまな分野において中長期的・計画的な財政支出を行う旨が明記された点。中長期的・計画的に政府が支出を行うという「単年度主義の弊害是正」と、2025年度の基礎的財政収支黒字化は基本的にバッティングする概念
・中長期の財政運営に関して「経済あっての財政」と明記され、分配よりも成長重視ということで評価できる。日本のジニ係数は低下しており所得格差は縮小している。労働分配率が過去45年間ほぼ50%で一定であるため、賃金が増えないのは名目GDPが増えないため。経済政策は分配よりも成長を優先すべきであろう。

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新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)
経済財政運営と改革の基本方針2022(仮称)原案
を眺めた(読んではいない)が、目標が見当たらない。目標数値も見当たらない。
企業の事業計画などには目標数値があるが、今回の政策案は作文にしか見えない。
しかし、経済においては、目標は「実質2%程度、名目3%程度を上回る成長」でしかありえない。
そして、今回の成長戦略でそれを達成しようということだろう。
しかし、成長戦略はこれまでもやってきた。
今回は、何か新しい発想が必要だ。それが、分配戦略だと思っていた。

実は、奇妙なことが日本経済に起きている。
家計調査で、二人以上の勤労者世帯において、世帯全員の勤め先収入は過去5年で年率2.5%増加している。企業の海外進出や安倍さんが「賃上げ、賃上げ」と騒いだからかもしれない。
ところが、消費支出は全く増えていない。いないどころか、減少気味である。
賃金が増えているのに、消費が増えない?何が起きたのだろう?私もよくわからない。
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20220603b

言えることは、今や日本経済が成長するには、消費増加をどのように促すかだろう。
今はチャンスである。所得が増えているのに、消費が減っているのだから、消費を拡大する余地が十分あるということである。
可処分所得ー消費=貯蓄(借金の返済も含む)であるが、増加した貯蓄を投資に回すこともいいが、まずは、消費を拡大することが重要だ。
日本経済の問題は、明らかに需要不足だ。

何を言いたいか?
新しい資本主義に需要喚起策が見当たらないことだ。