円安は、日本経済にとって、いいことなのか、悪いことなのか?
計量的に、適当な物差しが見つからないので、答えもない。
経済学者なら、円安で一人当たりの実質GDPがどうなるか、大きくなるのならいい円安、低くなるのなら悪い円安と定義するのだろうか?
しかし、それでは一般的に納得いかないだろう?

いい円安なのか。悪い円安なのかは、要は、外貨を保有していたかどうかによる。
A年金基金とB年金基金があるとしよう。
A年金基金は外貨預金20%を保有している。
B年金基金は外貨預金を保有していない。
円安になれば、A年金基金にとってはいいことだ。B年基金基金にとっては関係ないことだ。

AさんとBさんがいるとしよう。ここでは、為替でなく、不動産価格で考えよう。
Aさんは家を保有している。Bさんは借家住まいだ。
不動産価格が上昇すると、
Bさんは、ますます住宅の購入が難しくなりunhappyだ。
Aさんはhappyか?家を持っていてよかったと思うだろう。売ればもうかるだろう。しかし、売っても今以上の家が買えるわけではない。不動産価格が上がっているからだ。ホットはしているだろうが、生活がよりよくなることはない。

円安になると、これから海外進出しようとする企業にとってはunhappyだ。
2年前なら50億円で海外に工場を作れたのに、これからだと75億円かかるということになる。
海外で生産し海外で販売している(地産地消)企業はhappyだ。海外で挙げた収益を配当として日本に送ると円額は増える。
海外で生産し、日本に製品を輸出して日本で販売する企業はunhappyだ。製品の価格が同じ100ドルというわけにはいかないだろう。

家計はどうだろう?
輸入品の価格が上がるのでunhappyだと思うだろうが・・・。
円安で年間10万円の出費増になっているとしても、100万円の外貨預金があれば、10万円の為替差益が得られているかもしれない。差引チャラだ。
外貨預金をしている家計は少ないと思うが、外株、外貨投信を保有している家計はあるだろう。それに、自分で直接保有していなくても、公的年金や生命保険を通じて外貨債権を保有している。

結局、円安は日本経済にとってトータルでどうなのか?
上記のように、禅問答のような話だ。
日本が対外資産超過国であり、経常黒字国なので、トータルでは円安は悪いことではない。
しかし、日本の製造業は円安で収益が嵩上げされ配当増になる。間接的には年金などを通して国民にいきわたるが、配当増を直接享受できる人は多くない。富の差がますます大きくなる。
また、円安は他国との相対的な名目経済の規模縮小を引き起こす。
結局、円安はトータルで悪いことではないが、いいことでもない。

それに、円安が続けばいいが、円高になったときは、逆のことが起きる。
外貨を保有していることで、財産の目減りが起きる。


話は変わるが、本来物価は変わらないのがいいと思うが、つまり、インフレ率ゼロがいいと思うが、
経済が適度に成長していくには2%インフレが良いとされる。
同様に、為替は緩やかな円高が続くのがいいと思う。
経済学的には、物価変動に応じて為替も変動するのがいいとされる。
他国より、インフレ率が小さければ、緩やかな円高がいいということになる。
計量的には、実質実効為替レートが安定することだ。
その意味で、今は悪い円安だと思う。
20220516a


だからと言って、円高を起こすための金融政策をとることはおろかだ。
日本は円安になるような構造(生産の海外移転)になっている。
一時の為替レートのコントロールで構造を変えることはできない。
この話は長くなるので、以下省略。


急速な“円安” 日本経済にとってのプラス面とマイナス面は | NHK | 株価・為替
製造業の国内回帰始まる、建材受注増加、人件費安が魅力-東製鉄 - Bloomberg

ユーロ圏は為替に関しては理想的だ。
ドルが強いのは、基軸国ということもあるが、資源国でもあるからだ。
日本は、資源がないので、どうしても資源国以外とは大幅貿易黒字にしなければならない。
これは、物価と為替レートの関係の安定とは矛盾する。