岸田首相はロンドンでの講演で、「新しい資本主義」について説明した。
約2000兆円の個人(金融)資産を投資に振り向けることで、「資産所得倍増プラン」を推進すると表明した。

とにかく「新しい資本主義」とわけのわかないことを言って、一人悦に入るのは止めてほしい。
その点、アベノミクスは明快だった。失敗したのは、アベノミクスはよかったのだが、同時に逆アベノミクス(増税、社会保険料引上げ)もやったからだ。と同時に、安倍さんに、本当にアベノミクスをやる気があったのか疑わしいことだ。

話は戻って「約2000兆円の個人(金融)資産を投資に振り向けることで、資産所得倍増する」というプランだが、家計の金融資産のうち、約1000兆円の現預金を投資に振り向けようと言っている。
次の表は、日本全体の家計の金融資産内訳だ。単位は兆円。
20220508a2
と言っても、現預金のうち300兆円程度は銀行経由で住宅ローンの貸し出しに回っているので、残りは700兆円程度である。それも、銀行経由で国債や企業向け貸し出しに回っているので、家計の金融資産を投資に振り向けると言っても簡単ではない。

金融がどのようになっているのかを俯瞰的に見ると、
20220508b
この表は金融資産・負債をまとめたものである。つまり、誰かの借金は誰かの債権という考え方である。
企業は借金過多になっているが、設備などを保有しており、企業会計上で債務超過ということではない。同様に、政府や家計も不動産などを保有しているので、そうしたものを勘案すれば資産はさらに多い。
なお、非金融法人企業の負債には発行株式も含まれる。株価が上昇して時価総額が大きくなれば、非金融法人企業の負債は大きくなる。すると、家計の資産には株が入っているので、家計の資産も大きくなる。

こういうことを考えていくと、自分でも何を考えているのかわからなくなる。
言えることは、企業は銀行からの借入でなく、増資をして株主資本を増やし(銀行借り入れを返済する)、それを家計が保有することが岸田氏の狙いらしいということだ。

でも、実際は、企業は増資どころか、自社株買いをしている。株なら2%近い配当をしなければならないが、借入なら1%程度の利息支払いで済むからだ。
求められているのは、企業が利益を配当として家計に分配することだ。

ところが、家計の保有する現預金は誰が保有しているのか?ひょっとして老人ではないだろうか?だとすると、老人に今更株を買えと言うこともできないだろう。
この問題は結構難しい。

話は全く変わるが、韓国の「金融資産・負債バランス表」を作ってみた。
(韓国の資金循環統計データ非常にわかりやすく、親切に作られていて、びっくりした。)
政府は金融資産超過、日本と全く違う。企業の調達が大きい。国全体では金融資産超過で、対外借り入れの必要はない。家計も負債は大きいが、それ以上に資産がある。全体的に理想的だ。問題があるとすれば、偏在(特定の家計に資産が偏在しているなど)だろうが、それは、この表ではわからない。私もそこまで調べていないので、わからない。
20220508f







-