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blog20230310





貿易赤字が過去最大2兆8173億円 8月、資源高・円安で: 日本経済新聞

8月の貿易収支は2兆8173億円の赤字だった。赤字額は過去最大となった。
貿易赤字は13カ月連続。15年2月までの32カ月に次ぐ過去2番目の長さとなっている。

主因は、ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が上昇したことによる鉱物性燃料(原油や天然ガスなど)の輸入が拡大していること。

しかし、問題はそれだけではないことだ。
円安にも拘わらず、鉱物性燃料を除いた貿易収支でさえ改善していない。鉱物性燃料を除いた貿易収支は漸減傾向にある。
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通常は、円安になると輸入物価が高くなって輸入が抑制され、一方で、輸出が有利になるので輸出が伸び、結果、貿易収支が改善する。問題は2点ある。

(1)米国の住宅バブル崩壊後、米国の政策金利が急激に下げられ、⇒ 円高 ⇒ 日本の生産の海外移転。生産拠点が日本にないのだから、円安になっても輸出が増えない。

(2)生産拠点が海外にあり、海外で生産して日本に送るというシステムになっているが、海外の物価が上昇し、輸入金額が増える。ニュースでは、円安で輸入金額が増えていると書かれているが、本当の問題は、そもそも海外の生産物の価格が高くなっているのだ。

上記、(1)も(2)も、問題は生産の海外移転にある。今更悔やんでもしようがない。しかし、最近の円安継続で、生産の国内移転も見られるようになってきた。
日本政府は今以上の円安は望まないだろうが、生産の国内移転の動きに水をさすような急激な円高も望まないだろう。一度、生産の国内回帰をしたいだろう。そうすることでかつての成長経済を取り戻せるだろう。


次のグラフは、鉱物性燃料を除いた日本の貿易収支である。日本の貿易黒字を支えてきた2大要素(車と電気機器)のうち、電気機器が脱落している。それ以外についても悪化している。
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念のため、生産の海外移転は日本経済を弱体化させたが、企業は海外で稼いでいるので、企業収益という点では問題はない。
生産の海外移転で、日本国内の従業員は仕事にあぶれ、給与も上がらないが、海外現法の現地の労働者は恩恵にあずかっている。
もっと言えば、日本国内の企業の経営陣は、海外現法の収益の恩恵を受けられる(グローバル連結利益は高まるので)ので、報酬は増える。こうして、ごく一部の層の所得は増えている。日本は所得格差が小さいと言うが、ごく一部の上層部の所得は高まっている。

時々、記事や経済分析で、高所得者の定義を年収800万円とか1000万円とかしているが、政府も社会保険料の引き上げを、その層を狙い撃ちにしている感があるが、間違いである。

例えば、『現在の児童手当は所得が一定以上になると「特例給付」の対象となり、児童手当の金額が一般的な受給額より少なくなります。また、2022年10月の児童手当見直し後は、年収が1200万円以上になると手当を受け取れなくなります。』

年収960万円や1200万円もあれば、児童手当など不要ということだろう。しかし、それは誤りである。少なくとも、東京では高所得者というと、少なくとも年収1800万円以上だろう。

話は完全に脱線した。要は、生産の国内回帰をすすめなければ、日本経済の復活はないということだ。円高に苦しんだ日本が生産の海外移転をすすめたように、円安に苦しんで、生産の国内移転を進め、物価上昇に苦しみ2%の物価上昇を達成することが、日本経済復活につながる。

米国の今後の金融政策を考えると、訳が分からなくなってしまう。
(1)この40年間はディスインフレだったので、FRBは専ら景気(雇用)のことだけを考えてきた。しかし、これからは、インフレ抑制を最優先するという。これまで構築した各種経済モデルは役に立たないかもしれない。No model can explain the current situation. グリーンスパン議長の有名な言葉だ。(検索してもでてこないが、グリーンスパン議長がこれを言った翌日、Brown Brothers Harriman のストラテジストが来日して私の会社に訪問に来たが、この言葉の意味することについて論議になったので、よく覚えている。)
(2)70年代を参考にしたいが、パウエル議長は70年代の失敗の二の舞を踏みたくないという。70年代とは違う展開になるということだ。
(3)難しいのは 実質金利がマイナスで依然大幅金融緩和状態だということ。それをそう感じないのはリーマンショック後、常に金融緩和で景気を支えてきたからだ。ここからは、金利を物価上昇率より高くもっていくのではないか?

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話を日本の金融政策に持っていくと、
日銀が目指すのは ディマンドプルの物価上昇で、資源価格高騰によるコストプッシュインフレではない。そして、ディマンドプルを促すのは賃金上昇である。
その意味で サービス価格が注目される。
一部では高級品のディマンドが高まり、高級品のインフレが起きている。これは、日本の政策に問題があるということだろう。何度も言うが、今、日本に必要なのは分配政策である。それが成長戦略につながっていく。岸田首相は分配を掲げて総理になったが、なったとたん引っ込めてしまった。岸田氏の目標は総理になることだったのだろう。あの手帳はどうなったのだろう? 一たび総理になれば、できるだけ長く続けたいというのが目標だろう。国内経済はどうでもいいようだ。

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米国では、経済成長が減速すると、物価上昇率は高まる。

そんな馬鹿なと思うだろうが、データが示している。

経済成長をISM指数で計る(ISM指数はGDP成長率と連動しているので)と、次のグラフに見るように、ISM指数が拡大しているときは、消費者物価上率は低下する。逆も真である。つまり、景気が減速しているとき(ISM指数が低下している時)は、消費者物価上昇率は上昇する。
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右目盛りを上下逆転すると、こういう具合だ。
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以上が正しければ、利上げして景気を悪化させても、物価は上昇して、(利上げは)逆効果ということになってしまう。
これではFRBは何をしているのかわからない。

勿論、そんなことはない。実は、景気と物価の関係は次のようになっている。

以下略。

米 景気が悪化すると物価が上昇する摩訶不思議 - GogoJungle











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